総裁選では、5人の候補が争った(左から小林鷹之氏、茂木敏充氏、林芳正氏、高市氏、小泉進次郎氏) (共同通信社)

 とはいえ、事前の票読みでも麻生氏は小泉支持と目されていた。心変わりの理由について「党員票」があると指摘するのは、国際政治学者の舛添要一さんだ。 

「決選投票で高市さんと進次郎さんのどちらを選ぶか迫られた際、万人が納得できる論理が必要でした。“女性”や“若さ”では弱く、党員の意見を最優先することがもっとも無難で納得できる理由になりました。 

 要は、地元県連が高市さん推しなのに国会議員が進次郎さんを支持すると、地元から“次の選挙でお前を応援しない”と言われかねない。麻生さんはそうした状況を冷静に見極めて、党員票を重視して高市さん支持を決めたのでしょう」 

 政治評論家の伊藤達美さんもこう重ねる。 

「高市さんが総裁選で勝ったのは、ひとえに党員票を取れたからです。1回目の投票では党員・党友票が119票。小泉さんは84票、林さんは62票で大きな開きがあった。高市さんが党員の支持を得ていることが明らかになりました。 

 これが国会議員票に影響をもたらした。党員票、特に地方の党員は個々の国会議員にとっては地元での自分の票です。自身の票につながる人物を総裁にしないと、自分の票が離れることになる。だから決選投票では当然、高市さんに投票することになる。そういう理由が、今回の勝利のベースにあったと考えていいでしょう」 

 実際、各都道府県連での得票数が上位の候補が1票を獲得する決選投票における都道府県票でも、高市氏36票、小泉氏11票と大きな差がついた。 

 ただし昨年の総裁選でも、高市氏は1回目の投票でトップに立っている。決選投票で石破茂氏に逆転され、総裁のいすまであと一歩のところでの惜敗が彼女を変えたのだという。有馬さんは、高市氏の人づきあいについてこう分析する。 

「2021年に初めて総裁選に出て敗れた際、自身を支援してくれた議員への塩対応が目立ちました。せっかく高市さんに入れたのにねぎらいの言葉や慰労会などもなく、気分を害した議員もいたようです。 

 高市さんは勉強家で、もともと人との交流より政策の勉強を優先するタイプ。私との面会の際〝有馬さんと会っている時間に勉強できなかった分、家に持ち帰って遅くまで勉強しないといけないからね〟と語ったこともありました。それが、昨年の敗北を受けて大きく変わった」(有馬さん) 

 昨年の敗退後、彼女は「仲間づくり」を意識するようになったと重ねるのは宮崎さんだ。できる限り人と会って話を聞き、お世話になった議員には直筆のお礼状を書いたという。 

「ベタなことですが、人の心を動かせる政治家になるため彼女自身が大きく変化しました」(宮崎さん) 

 地方行脚も重ねた。何度も総裁選に出て地方の選挙応援やセミナーのゲストに呼ばれるようになり、いつしか“自民党の顔”として周知されるようになった。 

「この1年間、高市さんは熱心に地方を回り集会に参加してきました。常に明るい笑顔を絶やさず、石破首相の“陰”の対極にある陽の雰囲気を醸し出し、テレビでは厳しい表情も多いものの、自身の明るいキャラクターを素顔としてしっかりとアピールできたのだと思います。 

 高市さんが会長を務める自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会から、警察の潜入捜査の実現に向けた提言を出して闇バイト対策に尽力するなど実績も残した。そうした姿勢が結果につながったことは間違いありません」(伊藤さん) 

 人の意見に耳を傾け素直に聞き入れる姿勢は、政治行動以外にも表れた。 

「今回の総裁選後、高市さんのメイクや表情に注目が集まりました。これまでキリッとひかれていた眉や、強い色の口紅をガラッと変えて柔和な印象を与えたことが話題になっています。 

 近しい人物からすすめられたメイクレッスンを受けていたという話もあります」(宮崎さん) 

 闘志を前面に出す姿勢に柔和な雰囲気が加わったことで、高市氏は日本で初めて「ガラスの天井」を破った。150年に及ぶ憲政史上初めての女性首相に手をかけた高市氏の長い道のりは、40年前から始まった。 

(第2回に続く) 

※女性セブン2025年10月30日号 

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