1イニングなら打たれない
同点の8回から登板した佐々木は異例となる3イニングを任されてパーフェクトリリーフ。本塁打王のシュワーバー、MVP2回のハーパーらを抑え込み、チームの勝利を呼び込んだ。試合後にロバーツ監督も「ブルペンからの登板では史上最高級のパフォーマンス」と佐々木を激賞。
“見くびってすみませんでした”――そんな言葉が口を突いて出るような快投だった。
佐々木は高校時代、ロッテ時代を通じて登板過多を避ける“過保護”だったとの批判が根強くあるが、昭和の時代に連投に次ぐ連投で“権藤、権藤、雨、権藤”の流行語まで生んだ元中日エースの権藤博氏は佐々木の才能を高く評価している。
「ポストシーズンにリリーフとして臨んだ佐々木の投球に驚きの声があがっているが、彼の素材からしたらこの程度の結果は当たり前です。投手としてのポテンシャルは大谷以上ですからね。佐々木の力をもってすれば、メジャーの強打者でも1イニングなら抑えますよ。先発完投を目指せるローテーションピッチャーですから、3イニングのロングリリーフだって簡単にできて当然なんです」
ロッテ時代の佐々木は5年間、1度もシーズン通して先発ローテを守れなかった。今季も右肩を故障して離脱したわけだが、それがケガの功名となった部分もありそうだ。
5球団で投手コーチを歴任し、若き日のダルビッシュ有や田中将大を育てた名伯楽として知られる佐藤義則氏はこう言う。
「故障で長いイニングを投げさせることに不安もあってのリリーフ起用でしょうが、佐々木は抑えに転向して成功しやすいタイプです。球は速くてスプリットがよく落ちるから、1イニングだとなかなか打たれない。ポストシーズンの短期決戦ということでベンチの起用も本人の投球も思い切りが良く、いいほうに働いている。年間を通じて抑えとなると、毎日のようにブルペンに入らなければならず、故障持ちには難しかったでしょう」