里菜さんの元カレであるAからの手紙
「傷害致死罪にとどまる」とされた判決
事件が起きた時、里菜さんが中田受刑者の部屋に住んでいた理由は“入院待ちのため”だった。里菜さんは結婚後、夫との間に子をもうけたが、夫からのDVにより、子供を連れて別居していた。「籍を抜くと居場所を突き止められてしまうのではと不安で、離婚をしていませんでした」と里菜さんの母親は明かす。その後、シングルマザーとして娘を育てるため風俗の道に進んだが、知り合いに勧められて違法薬物に手を染めてしまう。
「なんとかやめてほしいと思い尽力していましたが、依存症に対して、私ひとりの力ではとても太刀打ちできない。ですので治療を専門にする病院に連絡して、入院の手続きを整えていました。ところがコロナが蔓延し、今入院することは無理ですと言われて、延期になっていたんです」(里菜さんの母親)
その最中、“入院まで家を使っていい”と同居を持ちかけたのが中田受刑者だった。申し出を受け、部屋に身を寄せていた里菜さんは、入院直前に中田受刑者にゴルフクラブで殴られ、亡くなった。
中田受刑者は2024年に大阪地裁で開かれた裁判員裁判において、ある男の名を挙げて、こう主張した。
「里菜さんが別の男とグルになって、自分を脅迫していた。恐怖のあまりゴルフクラブで殴った」
法廷での中田受刑者の証言によれば、その別の男・Aと手を組んだ里菜さんが、自分を脅して金を要求するために居候した……というのである。Aは里菜さんの元カレだった。そのため同受刑者は事件直前「自分の身の安全が確保できるまで里菜さんを拘束したが、里菜さんが騒いだので静かにさせるためにゴルフクラブで叩いた」のだと述べていた。
判決で大阪地裁は、中田受刑者のそんな言い分を認め、「被害者が第三者と組んで被告人(中田受刑者)を陥れようとしていた経緯に一定程度同情すべき点はある」と言及。“Aと里菜さんが中田受刑者を陥れようとしていた事実”があったと認定された。また殺人罪で起訴された中田受刑者には懲役16年が求刑されていたが、判決では傷害致死罪にとどまる、として懲役10年が言い渡された。控訴、上告したがいずれも棄却され確定している。