里菜さんのスマホに残るAとのLINEトーク履歴
“グルになって脅迫していた”とされた男性は取り調べを受けてもいなかった
こうしてAは、2025年に筆者が送った手紙を読むまで“里菜さんは別れた後、自分のLINEをブロックした”と思ったまま過ごしていたという。そうであれば、中田受刑者が裁判で主張していたような“脅迫”は、そもそもあり得ない。
それでも念の為に肝心の“脅迫”について問うと、返信にはこう綴られていた。
「僕が中田の命を狙っていた様な事実はありませんし、小さなトラブルさえもありませんでした。里菜さんと僕がグルになって、という様なことも完全な嘘です」
そして「例えば僕と別れた後の里菜さんが中田と交際することになり、何かでケンカになったのだとして、僕の名前で里菜さんが中田が脅迫した事もありえません。あの子は、その様な性格の女の子ではありませんでした」と続けた。
「ゴルフクラブで人を殴り殺すなんてことは簡単なことではありません。拘束して完全に動けない様にした上で、何度も殴らないと不可能です。どれ程、怖かっただろう、どれ程、痛かっただろう、と思うと、胸が痛いです。(中略)里菜さんの受けた苦しみや命の価値が中田の人生たった10年で償えるんですか。裁判員も裁判官も何を見てるんでしょう」(Aの手紙)
実際はなかったという“里菜さんとAによる中田受刑者への脅迫”が、あったかのように認定した大阪地裁の判決について、里菜さんの母親は「悔しくて仕方ありません。だいたい、証拠が一切無いのに中田の供述が認定されていることが不思議でなりません」と、いまも整理のつかない思いを抱えている。
Aは、中田受刑者の事件に関して取り調べを受けてもおらず、裁判に証人として呼ばれてもいない。繰り返すが、そもそも事件が起きたことすら、捜査機関から知らされてはいなかったと回答している。事件に至った経緯について、検察側の立証も甘ければ、里菜さんがきっかけを作ったかのように認定した裁判所も甘かったと言わざるを得ないのではないか。
「裁判員も裁判官も薬物中毒の風俗嬢が殴られて運悪く死んだぐらいにしか認識してない様に思います。僕は、中田も同じ目にあうべきだと思います」(Aの手紙)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)