養護施設職員は2ヶ月刺青に気づかず
当然、野崎さんは即座にAさんの身体の異変に気づいた。Aさんは「Bちゃんに入れられた」と答え、野崎さんもすぐに児相にも連絡し、説明を求めたというが、「『すいませんでした』と謝罪を繰り返すだけ」だったという。
当時、小学3年生のAさんと中学2年生のBさんの年齢は離れており、AさんはBさんについて「ヘアセットしてくれたり、優しかった」と語り、姉のような存在として慕っていたという。
Aさんの刺青は身体の目立つ箇所にある。そのため、野崎さんは「なぜ児童養護施設側で刺青を発見できなかったのか」という疑問が残ったという。
野崎さんがAさんに話を聞くと、BさんはAさんの刺青を上からボールペンで塗りつぶしていたそうだ。ある時、職員2人から「そんなところにホクロあった?」と指摘されるも特に深く追及はされなかった。
「Aは4日間にかけて5つの刺青を入れられたと言います。刺青を見つける機会は何回かあったとも感じます。Aによると、Bに刺青を入れられているときに、職員が近くにやってきて『(2人の距離が)近いよ』と注意を促す声かけをしたとのことですが、声をかけて去ったそうです。
Bは部屋の死角でAに刺青を掘っていたと言いますが、その時に職員の方がキチンと目視で確認していれば発見できたはずです。また、刺青を入れられてからAが退所するまで間、2ヶ月近くの時間があった。その間、職員の一人としてAの刺青に気づかなかったと言います。施設の退所がさらに遅れていれば、刺青の数がもっと増えていたかもしれないと思うとゾッとします」
今回の騒動について、教育研究家の中谷哲久氏はこう指摘する。
「こども家庭庁は、児童養護施設などで発生した“重大事案”についてガイドラインを設けています。重大事案とは、子どもの権利が著しく侵害された事案と位置付けられ、子ども間において発生した問題行為のことで、『いじめや暴力、性問題などにより、権利の侵害を受けて被害者が重篤なもの』と記され、ガイドラインには施設などの過失の有無を問わず、施設の管理下で発生した事案をすべて対象としています」
養護施設ではAさんとBさんは一時保護された4人のうちの2人で、職員は7人前後の持ち回りで対応していたという。前出・中谷氏が今回のケースについて語る。
「今回のように、5ヶ所もの刺青をお子さんが入れられたケースは、まさに重大事案の定義の対象に当たるでしょう。重大事案のおそれがある場合は、24時間以内に都道府県(政令指定都市の場合は市)に報告。その後、行政側が重大事案と判断した場合は速やかに国に報告しなければならない。まずは施設側が報告をしているのかどうか。その判断を受け、児童養護施設側は保護者に説明をする義務があると考えます」