仲良し家族だと思っていたけれど、葬儀の場で初めて…
『絶縁家族』を書くまで、橘さんは、「自分たちの家がおかしい、特別に変なんだ」と思っていたそうだが、周りを見渡すと、うまくいっていない家族は当たり前のようにあることに気づいたそうだ。
「仲良し家族だと思っていたけど、父の葬儀にお兄さんだけ来なかったとか、妻の実家の葬儀に行ったら義妹家族だけ来なかったとか。義理の家族の人間関係なんて、結婚してもみなさんよくわかっていなくて、家族が集まる葬儀の場になって初めて、うまくいってないとわかることもあるんです」
第3弾として予定している、心に残る温かい別れをテーマにした本の取材で話を聞いた相手が、すばらしい葬儀で母を見送った話をした後で、「主人には本当に頭に来ている」と言い始めたそう。
夫は葬儀に参列したが、夫の母から別件で電話があったとき、ひとことのお悔やみもなく、不思議に思った。じつは夫は妻の母親が亡くなったことを自分の親にまったく伝えてなかったらしい。
「『私はもう、向こうの親のことは絶対にやりません』ってすごく怒ってらして。もしかしたら親孝行な息子で、高齢の親に、身近な人の旅立ちを言いたくなかったのかもしれませんけど、妻にひとこと相談しておけばよかったのにと思います」
墓参りについて取材してみると、妻が夫の実家の墓参りに行かないと答える人は、50代、60代でびっくりするほど多くなっているのだとか。
「結果だけ見ると何か妻がよくないように見えるかもしれませんが、その前の世代、たとえば私の父も主人の父も、妻の実家の墓参りには行っていません。それを当たり前とする風潮に反発して、私は夫と結婚したので、夫の家に嫁いだわけじゃないから介護はそれぞれの実子で担うべきだと考えるように、これからは墓参りもそれぞれで、となるのかもしれません」
家族代行業を行う法人や、家族に知らせず死後事務を執り行う委任契約を結べる司法書士事務所も紹介されている。家族のあり方が変わるなか、家族に全てを任せるのではなく、必要に応じて外部に頼む人がこれからは増えそうだ。
【プロフィール】
橘さつき(たちばな・さつき)1961年東京都生まれ。早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。日本葬送文化学会常任理事。葬祭カウンセラー。著書に『絶縁家族 終焉のとき──試される「家族」の絆──』がある。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2025年10月30日号