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葬儀カウンセラー・橘さつきさん『葬儀から壊れていく家族』インタビュー「これからは墓参りもそれぞれの実子で、となるのかもしれません」

『葬儀から壊れていく家族』/さくら舎

『葬儀から壊れていく家族』/さくら舎

【著者インタビュー】橘さつきさん/『葬儀から壊れていく家族』/さくら舎/1980円

【本の内容】
《家族間の葛藤に「弔いの場」であることをわきまえようとする「モラル」と、自身の中で蠢く「負の感情」とのせめぎ合い。私たちはこれまで、そうした現実に背を向けて、美談で終わらせることを良しとしてきたのではないだろうか?》(「はじめに」より)。具体的な家族の「壊れていく」エピソードはどれも決して他人事には思えず、家族はどうあるべきか、どう弔っていけばいいか、という大きな問いが胸に迫ってくる一冊。

老いが身近な問題になったいまだから書けることがある

 前著『絶縁家族 終焉のとき』は、橘さん自身が母や兄との絶縁を経験したことから取材を始め、さまざまな人に絶縁にいたるまでの家族の話を聞いたものだ。

 今回の『葬儀から壊れていく家族』では、『絶縁家族』とはまた異なる、ごくふつうの、自分たちは「いい家族」だと思っていたという人に取材し、家族の死と弔いをきっかけに人間関係が壊れていく様子を描く。

「今回、登場しているのは、ごくふつうの、社会的にもまっとうな方たちばかりです。どこまで書けばいいのか、というのはこの2年間、書きながらずっと悩んで、何度も何度も書き直しました。読者からは、『泣きながら何度も読みました』という反応もあれば、『苦しくてつらくて、休み休みじゃないと読めない』という方もいらっしゃいますね」

 相続や葬儀について取り上げた本は他にもあるが、橘さんには、家族について、一様にサラッと書かれているように感じられたという。

「事象だけまとめて、それぞれの気持ちまでは書かれていないような気がして。じゃあ自分が書こうと考えて、さくら舎の編集者からも、『人間の業を描く深いノンフィクションを書いてほしい』と言われました。ただ、書きすぎると、書かれた人も読者も嫌な思いをするんじゃないかと気になって。何度も書き直して、自分では判断がつかなくなり、思い切って編集者に読んでもらったら、『このまま出しましょう』ということになったんです」

 橘さんはいま、64歳。いまの自分の年齢が、この本を書き上げるのにはよかったという。

「私の年齢だと、老いは他人事ではない、身近な問題です。『排せつのケアは一番の悩み』と介護の本では1行で収めてしまったりするけど、それだと介護される側、する側の苦労は伝わらない。いまの自分は両方の立場で考えられます。息子が結婚して、自分が嫁でもあり姑でもあり、50代ではわからなかったことも見えてきて、いま書かなきゃ、と自分を奮い立たせました」

 橘さんは葬祭カウンセラーであり、日本葬送文化学会の会員で、事務局もつとめている。

「葬送文化に興味を持ったのは11年ほど前、友人の夫で『ライオンキング』の初代パーカッション奏者だったムクナ・チャカトゥンバさんの葬儀がきっかけです。コンゴ(民主共和国)出身で、葬儀ではアフリカンドラムとアフリカンダンスが披露され、死者の魂と対話し、故郷に送り届けようとするすばらしいものでした。ムクナさんの本に葬儀について書くことになり、葬送文化に興味を持って葬送文化学会にお邪魔して、いつのまにやら事務局をやるようになりました」

『絶縁家族』で描いた母や兄との不和は、30年以上前、橘さんが第一子を妊娠したことで始まった。跡取りの長男夫婦に子どもができず、妊娠した橘さんを母も兄も敵視するようになる。母からの攻撃は臨月に始まり、死産予告の手紙が自宅の郵便受けへ届けられた。

「ライターになる前、私はシナリオの勉強をしていたんです。自分が経験した不条理を最初はシナリオに書いてみたいと思ったんですが、先生に『不妊の問題はとてもセンシティブだから、コンクールに出しても難しいよ』と言われました。それならノンフィクションに書いてみようと、ライタースクールに行き直したんです」

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