タンザニアはアフリカのなかで比較的治安がいいとされている(時事通信フォト)
「他国民との共存を考えた際、犯罪率よりも重要なのが犯罪傾向を知ることです。実は、タンザニアなどのアフリカ諸国で社会問題になっているのは身代金目的の誘拐。最近では、9月13日にタンザニア南西部の都市ムベヤで事件が起きました。同市のムズンベ大学の女子学生、シャイローズ・マハンデさん(21)が何者かに誘拐され、4日後に焼死体となって発見されたんです」
現地報道などによると、誘拐犯は13日にシャイローズさんの父、マブラ・マハンデさんに電話をかけ、同国中部に位置する都市タボラにシャイローズさんを連れて向かっていることを告げると同時に、解放の条件として身代金を要求したという。
前出の全国紙国際部記者は事件の顛末をこう説明する。
「誘拐犯はマブラさんに身代金を要求するだけでなく、残酷にもシャイローズさんを拷問している動画をマブラさんに送り付けたのです。マブラさんは地元メディアの取材に『犯人側はまず、この拷問をやめてほしければ、少額でもいいからまずはカネを支払えと要求してきた。娘があまりにも苦しんでいる様子を見て、支払うほかなかった』と話しています。
しかし、事件は最悪の結末を迎えました。ムベヤのナネナネ地区で火災が発生し、焼け跡から遺体が見つかったのです。警察のその後の捜査で、身元はシャイローズさんと特定されました」
タンザニアでは今回のケースのように金銭目的の犯罪や、女性を狙った暴力事件が多いという。
「タンザニアの『法と人権センター』によると、同国ではここ数年、年平均で492人の女性が殺害され、2023年はそのうちの50件が親密なパートナーによる殺害でした。女性の失踪も頻発しています。
こうした犯罪傾向には、同国内の貧困問題や女性差別が背景にあります」(前出・記者)
もちろん、こういった事件は同国の一側面でしかないが、知識を深めることは重要だ。長井市が「今後も交流自体は続ける」と明らかにしているように、相互理解を深め、よりよい関係を模索すべきだろう。