容疑者らが働いていた池袋北口のガールズバー

容疑者らが働いていた池袋北口のガールズバー

〈高額歩合〉〈10万以上〉

「朝の部と夜の部で、運営母体が違うんですが、私がいたときはすでに鈴木さんが責任者でした。彼は昔から“夜一本”でやってきた人らしく、かつては別のガールズバーも切り盛りしていたと聞きました。

 とにかく、可愛い子と客がとれる子には甘かったんですよね。逆に見た目がよくない子とかにはすごく厳しかった。採用の時点でスペック(身長から体重を引いた数字。数字が大きいほど、身長比で痩せているとされる)100以下は門前払いみたいな。売春させられていたという子も、あまりキビキビ働ける子ではなくて、いつもいびられていた。開店前や営業後になると、いつも非常階段のところで泣いていましたから、相当つらかったはず」

 求人サイトに掲出されている広告にもこの“スペックルール”が記載されていた。実際の求人広告の採用基準には〈やる気がある子〉〈最低週3以上の出勤〉という記載のほかに、〈スペック105〜110以上(交渉あり、100以下は基本的に不可)〉と書かれている。

 さらに目を引くのは〈高額歩合〉〈10万以上〉という文字。前出の女性が続ける。

「時給の設定は一切なく、完全歩合制でした。お客がつかないと給料0円もあります。ペナルティも変わっていて、当日欠勤や遅刻をしてしまうと、給料日がずれていくんです。そういうのを繰り返すと“ノルマ出勤”で補填しない限り、お金を受け取る日がどんどん先延ばしになっちゃう。

 さっきも言ったように、厳しくする子にはめちゃくちゃ厳しくしていましたし、被害者の子以外にも怒られている子を何回も見ました。私も一度ありましたが、店長は説教スイッチが入ると止まらない。営業時間中、ずっと怒られました。カッとキレて、それがずっと続く。でも次の日にはケロッと『昨日はごめんね』みたいな。だから、女の子の入れ替わりが激しかった」

 そんな環境で重用されていたのが件の“美人マネジャー”田野容疑者だ。店では「まいか」と名乗り、“美人モテ店員”だったのはすでに報じたとおり。元従業員曰く、「昨年、役職がついて鈴木容疑者の“右腕”のように働いていた」ようで、従業員を取りまとめる現場監督のような立場だったようだ。

 この女性がさらに続ける。

イケイケな営業スタイルだった

イケイケな営業スタイルだった(飲食店サイトより、現在は削除済み)

「シャンパン入れてー!」

「まいかさん、酒はめちゃくちゃ強いですね。泡ものもショットもぐいぐいいける方。結構、お客に対して強気に粘る“オラオラ営業”で、よく『シャンパン入れてー!』とねだっていました。鈴木容疑者との間に入ってくれたり、親身に悩みを聞いてくれたりと、基本的には親切な女性でした。

 でも売春させられてた子にだけはかなり冷たくて、卓で飲みきれないシャンパンやテキーラの“処理係”をさせていました。冷たい目で『飲まないの?』という感じで強要して、飲ませていた。『ブスで、なにもできないくせに』という暴言も毎日のようにありました。あまり仕事ができる子じゃないのは確かですが、かわいそうだった」

 飲食店紹介サイト(現在は削除済み)にあったプロフィールによると、田野容疑者は愛媛県出身。入店日はおととし4月で、似ている芸能人の欄にはアイドルグループ「乃木坂46」の元メンバーの名前などを挙げている。

「すごく美人で、人気だったのは間違いないです。下手したら、一度に数百万円という売上げの時もあった。羽振りが良くて、しょっちゅう高いお店で食事をしていました。

 あるとき、ふと疑問に思って『もっといいキャバクラとかいかないんですか』と聞いたことがあるんですけど、『昇格して、(店の)売上げの歩合ももらっているからこっちの方がいいんだ』って。お金についてさらに聞いたんですけど、『これ以上はあまり触れられたくない』と話をはぐらかされてしまった。今思えば、売春させていたことに関係があったのかな……とか考えてしまいます」

 そんな彼女を鈴木容疑者は可愛がり、2人は自他ともに認める“ビジネスパートナー”になっていった。

「まいかさんは鈴木容疑者といつも一緒でした。綺麗で売り上げがあるから贔屓されるのは仕方ないですが、少し度を超えることもあって。営業時間中に“偵察”だと称して、他のバーとかに2人で飲みに行って帰ってこなかったり……。『アフターで、朝までお客さんと3人で飲んだんだよねー』と謎の自慢をされることも多かった」

“ルックス重視”や“実力主義”を掲げ、店を運営していた鈴木容疑者ら。この思想は徐々にエスカレートし、果ては女性を“洗脳”していくのだ──。

(後編に続く

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