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えすとえむさん『王様の耳』最終第6巻インタビュー「どうして人は、時として酒場で初対面の人に秘密を饒舌に語るのか」

『王様の耳 秘密のバーへようこそ』全6巻/えすとえむ

『王様の耳 秘密のバーへようこそ』全6巻/えすとえむ

【著者インタビュー】えすとえむさん/『王様の耳 秘密のバーへようこそ』全6巻

──『王様の耳』がついに完結しました。

「完結から1年以上が経っているのですが、とにかくバタバタのスケジュールの中で描いていたので、物語を終えたぞという感慨はあまりないまま現在に至ります(笑い)。連載開始時に描いていた終盤の流れとは異なる、まさにキャラクターたち任せのラストになったんですが、なるほどそうなったか〜と人ごとのような。改めて読み返すと(時には旅先で)描いているときのことを思い出して、そこに懐かしさは感じますね。絶え間なくペンを動かしているという点で本当にいい経験でした」

──連載中から、先が読めない展開で話題を集めました。バーで秘密を買い取るという奇想天外な設定はどこから?

「お酒が好きなのですが、お酒の席で見知らぬ同士意気投合するような経験をしたり、そんなシーンを見聞きするうちに『どうして人は時として初対面の人の前の方が自分について饒舌に語れたりするんだろう』と面白く感じたのがバーを舞台に描けないかと思ったきっかけです。

『あららそんなこと私が聞いていいの?』というようなお話が飛び出したり、人の人生の面白さが垣間見える瞬間がある。コミュニケーションとしての身の上話と決して触れられない秘密の身の上話、それに値段がつくとしたら人はそれを話すだろうか? 週刊誌という媒体にも秘密というテーマはぴったりだなと思って発案しました」

──第1巻から読み直すと、改めていくつもの伏線が張り巡らされ、客が打ち明ける秘密の一つひとつにも意味があったことがわかります。どんな苦労がありましたか?

秘密を買い取る謎のバーの噂は人の口から口へ広がって…(1巻より)

秘密を買い取る謎のバーの噂は人の口から口へ広がって…(1巻より)

「自分が伏線を忘れないようにしておくことがなかなか大変でした(笑い)。連載前にストーリーをしっかり練っておくことをせず、1話12ページで月に3回締め切りという週刊に近いスケジュールで描く中で伏線を張り、回収していく必要があったのですが、行き当たりばったりのライブ感の中でそれを進めるのはスリリングでした。

 序盤のそれぞれの客の持つ秘密を考えるのは楽しかったです。もちろん世の中には漫画なんてかわいく見えるほどの驚くような秘密を抱えながら生きているかたがいると思うので、もっと個々のお客さんの秘密にフォーカスするパートを続けてもよかったのかなという反省はありますが、スピード感を失わずにシバケンくんの物語を描き切りたかったため、あのような構成になりました」

──来年、漫画家デビュー20周年となりますが、『王様の耳』はえすとえむさんにとってどんな作品でしょうか。

「執筆スケジュールに加えて漫画誌以外での連載というのが一つの挑戦でした。描く瞬発力や筋力を衰えさせないという意味でも貴重な連載経験だったと思います。作品の傾向としては、初期作品の空気感も漂わせつつ続刊ものではあまり描いてこなかった少しダークな雰囲気のものを描けたのも新鮮でした。まだまだやりたいことがたくさんあるなと、この先へのブーストになってくれたような作品です。

 そして紙の本が伸び悩む中でこだわった特殊装丁を6巻まで続けさせていただけたことも幸運だと思っています。電子書籍が気楽ですが、デザイナーさんのこだわりも詰まった紙の本をぜひ手に取っていただけたら。

 気づけばデビューから20年、まだまだ描き続けますので今後ともよろしくお願いいたします!」

※女性セブン2025年11月13・20日号

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