左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)

左が金井正彰・外務省アジア大洋州局長、右が劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)

優位性を示す“パフォーマンス”か

 ただし、ほかの見方もできるようだ。別の記者が続ける。

「中国側としては『日本側がレッドラインを越えた』という明確な意思表示をする必要があったとの指摘もある。両手をポケットに入れる振る舞いをとった劉氏の姿をあえて拡散させることは、中国なりの外交手段だったのかもしれません」

 中国外務省のこうした“パフォーマンス”は、過去にもあったようだ。元『文藝春秋』編集長である木俣正剛氏が解説する。

「昔話ですが、日本国民を激しく怒らせたのが唐家璇(とう・かせん)外相です。当時、小泉純一郎首相が靖国参拝をした頃に田中真紀子外務大臣と面会。その後の記者会見で、『やめなさいとゲンメイしました』と発言しました。翌日の新聞は『言明』と書きましたが、テレビで彼の言葉で聞いた多くの日本人には『厳命』に聞こえたことから、今でいう炎上状態になりました」

 劉氏の上司に当たる王毅(おう・き)外相は2回目の外相で、日本大使時代も長い。木俣氏によると「基本的に知日派だが、外交では大体強気発言」だという。

「王外相は日本に友人も多いですし、日本のことをよくわかっている人です。だからこそ、むしろ中国に対しては『他国に厳しい態度をとっている』というパフォーマンスが必要なのです。

 2013年12月、当時中国外交部長だった王毅氏は、安倍首相(当時)の靖国神社参拝に対し『靖国神社は、かつての日本軍国主義による対外的侵略戦争発動の精神的道具でありシンボル』と強く抗議し、その後も日本の国会議員らによる靖国参拝についてはたびたび強い態度で接しています」

 木俣氏によると、そうした態度はもちろん日本に対してだけではなく、アメリカやイギリスに対しても同様で、特に印象的なのが韓国に対してのパフォーマンスとのことだ。

「韓中が高高度ミサイル防衛(THAAD)配備問題で対立していた2016年7月。韓中外交長官会談で韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が中国に対して反論しようとしたところ、当時外交部長だった王毅氏が、頬杖をついて追い払うかのような手振りを見せ、尹長官の発言が終わる前に中国外交部職員が記者団を現場から退去させたこともありました。メディアを利用した意図的な外交欠礼でした」

 中国は、日本産水産物の輸入を停止することを表明するなど、両国の緊張はエスカレートしているように見える。日中両国政府はどんな着地点を探るのだろうのか。

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