辛い時は「逃げることも選択肢」と説く松本氏
辛かったら逃げてもいい
居酒屋などで行なわれた取材は2~4時間に及ぶことが多かった。
「取材にのめり込みすぎて、途中から事情聴取みたいになってましたね(笑)。でも、皆さんは本当に包み隠さず話してくれたと思います。酔いも手伝って、どんどん深い話になっていくんです。きっとどこかで『誰かに話したい』という思いがあったのでしょう」
松本氏は、失踪者たちの“生命力”に強く惹かれていた。
「彼らは逃げっぱなしじゃないんです。逃げた後に、もう一度仕事を始めたり、結婚して家庭を持ったり、どうにか自分の力で人生をやり直そうとする。そのエネルギーがすごいですよね。一度は現実から目を背けながらも、彼らはまた生きることを選んでいます。がむしゃらに今も生きているのです」
仕事や家庭、学校など様々な人間関係に限界を感じて耐えられなくなった時、「逃げる」ことも選択肢だというメッセージが同書には込められているという。
「ブラック企業に勤めている人、家庭環境に苦しんでる人、いじめに悩んでる人。そんな人たちにぜひ読んでほしいですね。“辛かったら逃げてもいい”と伝えたいんです」
松本氏が描き出したのは、誰もが抱える“逃げたい衝動”を実行に移し、それでも生きていこうとする人々の姿だった。
【プロフィール】
松本祐貴(まつもと・ゆうき)/1977年生まれ、大阪府出身。雑誌記者、出版社勤務を経て、フリー編集者&ライターに。人物インタビュー、ルポ、医療など幅広いジャンルで執筆・編集を手がける。著書に『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)、『DIY葬儀ハンドブック』(駒草出版)などブックライターとしても多数の作品に関わる。
