通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
次に生まれたのが初めての牝馬アカイトリノムスメで、私の厩舎で管理させてもらうことになった。牡馬にくらべてちょっと迫力はなかったけれど、ディープインパクトの産駒だけあって走りが軽く、センスの良さを感じたし、何より性格が素直だった。
3歳2月にクイーンカップを勝って賞金を積み上げ、ソダシが勝った桜花賞は4着で、オークスではユーバーレーベンの2着。走る度にメンタルがしっかりしてきて、三冠目の秋華賞を勝ってくれた。4歳の春に骨折して早々と引退してしまったが、母親となって昨年ブリックスアンドモルタルの子を生んだ。アパパネもおばあちゃんになったわけだ。
その弟たち、バードウォッチャーとアマキヒも、それぞれ頑張って走り、調教師生活が残り少なくなった私に、いい夢を見させてくれた。
現役時代にGIを5勝もしただけでなく、母親として毎年生んだ子供たちがみな競走馬として出世し、ついにはGI馬も送り出した。これぞ名牝中の名牝である。この血が広く長く根付いてくれることを願うばかりだ。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年11月28日・12月5日号
