貨物列車がもしクマと衝突したら……(写真提供/イメージマート)
また、忌避剤の散布だけで列車を安全に運行できるのか?それだけでは、心もとないと感じる人も少なくないだろう。
列車には自動車と同様に前照灯が備えられている。近年、二輪車では安全性を高めるために昼間でも前照灯を点灯させる、鉄道でもクマ対策も含めて同様の取り組みを実施する可能性はあるのだろうか?
「列車にも前照灯があり、夜間運行時などで運転士がハイビームに切り替えて視界を確保することはあります。しかし、ハイビームがクマ除けになるといった裏付けはありません。そのため、特にハイビームで運行を奨励することは考えていません」(同)
クマ被害の報告は北海道と東北に目立つが、だからといって他地域に居住・生活している人たちも安心はできない。すでに首都圏でもクマ出没情報が増えており、埼玉県飯能市の住宅街にクマの目撃情報が寄せられたことが話題になった。また、東京都環境局もツキノワグマの目撃・痕跡情報を地図化した「ツキノワグマ目撃等情報マップ」を公開して注意を喚起している。
同マップによると、都内でクマの目撃情報・痕跡は2024年度に324件、2025年度は10月末までに241件が報告されている。
今のところ都内でクマが出没したとされるエリアは、高尾山や奥多摩といった人里から離れたエリアに限られている。しかし、相次ぐ騒動には、山で生息していたクマが市街地、なかには繁華街のそばへと降りてきたことによって起きている。
すでに大都市圏では、イノシシやシカなど野生動物が列車と衝突する事故は頻繁に起きている。それを考えれば、今後は東京都や大阪府でもクマによる衝突事故が起きる可能性は十分にある。
クマと衝突すれば、当然ながら列車は運休を余儀なくされる。そして、鉄道会社は安全第一の観点からクマ被害が出た路線を経過観察と称して数日間は運休するだろう。それによって通勤・通学、買い物など、日常生活にも支障が及ぶ。
それは旅客列車のみならず、石油や農産物などを輸送する貨物列車の運行にも影響が出る。貨物列車の運休は首都圏の生活に打撃を与えることになるだろう。クマ出没・被害は、大都市圏とも無関係ではない。
