ロマンスカーの復権を掲げて2005年に登場。ファンから絶大な人気となった(2022年1月写真撮影:小川裕夫)
小田急が新型ロマンスカーを開発・登場させる背景には、30000形EXEが1996年から運行を開始し、2026年で30年を迎えることが要因のひとつになっている。EXE は2017年からEXEαへとプチリニューアルされたが、それでも老朽化には抗えない。つまり、80000形はEXEを置き換える意図を含んでいる。
「新型ロマンスカーはEXEを代替する目的で開発されますが、運行を開始と同時にEXEが引退するかどうかは未定です。新型ロマンスカーとEXEが並んでいる姿を見られる可能性はあります」(同)
順番をみるとEXEの置き換えを目的にした新型ロマンスカーだが、小田急は、新しく投入予定の80000形を系統としてはVSEの後継と位置付けている。
白いロマンスカーとして知られたVSEは、2005年にロマンスカーの復権を掲げて登場した車両だ。ひとつ前の新型ロマンスカーにあたるEXEは、ロマンスカーがウリにしていた展望車がないことなどを理由に、ファンから「EXEはロマンスカーじゃない」とまで酷評されることがあり、ライトユーザーにもロマンスカーらしさを求める思いが根強かったようで小田急は先祖返りのようにVSEを開発した。
VSEではロマンスカーの特徴でもある展望車が復活し、さらに白いカラーリングやスタイリッシュな流線形のデザイン、ロマンスカーの伝統色であるバーミリオンオレンジをラインカラーに採用するといったセンスが人気に火をつけた。
しかし、VSEは独特な構造ゆえにメンテナンスに手間がかかることがネックになった。そうした理由から、早々に引退を表明。先代のEXEが引退していないのに、2022年3月に定期運行を終了した。以降は臨時列車として走ったが、2023年12月には完全に引退している。
2025年になったいま、小田急が80000形をVSEの後継と位置付ける背景には、早すぎる引退を惜しむ声が多々あったことを物語っている。
そうしたファンの声を汲む形でVSEの後継となるロマンスカーを登場させるわけだが、ファンの間でVSE最大の特徴とされていたのが、日本の鉄道では少ない連接台車という点だった。
連接台車からボギー台車へ
鉄道車両は車体の下に台車と呼ばれる装置を装着している。その台車の構造には大きくボギー車と連接台車の2タイプがあり、VSEは連接台車を採用している。80000形はボギー台車を採用することが発表されているため、この時点でVSEとは台車の構造が大きく異なる。
