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《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析

卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)

卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)

 相手チームの本拠地で試合に挑むときに、普通とは著しく異なる厳しい環境におかれる「アウェーの洗礼」。サッカーなどの中継で多くの人が知るところだろうが、今回、卓球の国別対抗戦で日本選手たちが中国で浴びたアウェーの洗礼は、テレビ中継の画面からも異様さが際立っていた。そのなかで1ゲーム先取した張本智和選手は、いったいどのように自分の心をコントロールしたのか、臨床心理士の岡村美奈さんが分析する。

 * * *
 中国の成都で12月7日に行われた卓球のITTF混合団体ワールドカップ2025(W杯)の決勝戦で日本は中国に1-8で敗れ準優勝となったが、善戦した張本智和選手にネット上は絶賛の嵐となった。

 試合を見なかった人には、張本選手が意地で奪った1ゲームの凄さがわからないかもしれない。日中関係の悪化が影響してか、日本人選手は完全アウェー状態に。中でも前日に行われた第3試合男子シングルスに出場した張本選手に対する中国人ファンの反応はひどかった。対戦したフランス人選手には中国人ファンからの声援が沸き起こったが、張本選手がポイントをとるとブーイングの大合唱。この試合はすべてのゲームを落として負けてしまった張本選手だったが、決勝戦では世界2位の中国選手を相手に試合開始直後から5ポイント連取など攻め続け、気迫みなぎる試合運びで1ゲームを奪った。

 卓球王国である中国は強い。2023年から始まったW杯にこれで3連覇という圧倒的な強さを誇る。対する日本は2023年が3位、2024年は5位。2025年度の今回、ヤジやブーイングが飛ぶ異様な雰囲気に、会場では「スポーツマンシップにのっとった応援をしましょう」とのアナウンスが流れたほどだったというが、そんな中でも初の決勝進出を果たし、準優勝した日本選手はあらゆる面で強くなっているのだろう。

 決勝戦は比較的落ち着いた雰囲気の中で行われたというが、会場で観戦する中国人ファンからの圧はすごかったのではないだろうか。野球やサッカーなどでも国際大会やW杯が行われる度に、海外で開催される試合で会場のアウェームードにさらされながら頑張る選手たちがいる。今回はそこに政治的な事情も加わったことで異様さが増したのだ。

 準優勝のインタビューで「今大会受けたものを忘れることはない」と張本選手自身がコメントしているほどの雰囲気の中、前日の試合から自らを立て直し、中国人選手から1ゲームを先取した張本選手のメンタルは強かったといえる。いや、試合運びを見ると、前日の経験からさらにメンタルが強化されたのかもしれない。サッカーなどでは、外国語のヤジの意味がわからないから気にならないという選手もいるようだが、そうではない選手がほとんどだろう。リラックスと緊張との適度なバランスを保ち、究極の集中状態という「ゾーン」に入り、周囲がまったく気にならなく選手もいるだろうが、一流のアスリートといえど毎回ゾーンの状態に入れるとは限らないと聞く。

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