SNS上では誹謗中傷が繰り返された
リクルート社の責任は
リクルートの対応に問題はないのか。労働問題に詳しい中村和雄弁護士が指摘する。
「従業員が社内の不祥事を告発した場合、その内容が真実であれば会社側が従業員を解雇・処分することは原則禁止です。ただし告発と解雇や賞与減の因果関係について従業員側が立証する必要があり、それが難しい。他方、今年6月に改正された公益通報者保護法では告発者が1年以内に解雇・処分されたら、会社側に“告発が理由ではない”と立証する責任がある。仮に今回のケースが法改正後に生じていたらA氏の解雇は無効になった可能性があります」
社用携帯から社員によって誹謗中傷が行なわれた場合、会社の責任が問われるケースもあると中村弁護士が続ける。
「A氏が抗議してもリクルートが社用携帯からの誹謗中傷を放置した場合、従業員の不正行為を止める立場にありながら、会社としての義務を怠っているとして、民法上の『使用者責任』や『安全配慮義務違反』を問われる可能性はあります」
オンラインでのサクラ、SNSでの告発や誹謗中傷など現代のネット社会の問題が詰まった一件。今後の対応をめぐっては、リクルートの企業倫理が問われることになる。
※週刊ポスト2025年12月19日号
