角打ちは”お試し酒”の文化
晃子さんは、店内をまわりながら、「こんにちは」とお客さんに話しかける。「体調、悪いとこない? どないです?」「寒なったけど大丈夫ですか?」などの心配りの言葉だ。そんな晃子さんの雰囲気も、客たちを魅了している。
この日は、関西の立ち飲み同好会のメンバーも多く来ていた。「初対面でもこんなに仲良く喋れる場所は角打ちしかないんとちゃうかな。『どっから来たん?』と、ただ言えばええやん。だから、いろんな街のいろんな店に行ってみたいんです」と同好会の会長さん(50代)は話す。
インスタグラムなどのSNSで繋がり、いいお店の情報交換をしていて、中には大阪府から電車を乗り継いで来た人もいた。
「松岡商店は、京阪神の立ち飲みファンの中で、一度は行ってみたい店としてよく名前があがります。ようやく来ることができました」(50代、IT関係)。
「フードのメニュー構成のこだわりがあることが個性的です。ここは女子ウケもいいですね。新長田も店が少しずつ減ってきてはいるけれど、ここはがんばってはるから嬉しいです。」(40代、観光業)と、同好会のメンバーはリラックスしながら楽しんでいる。
「角打ちに慣れてない人にも、過ごし方を教えてくれるお店ですね。立ち飲み素人の自分でもしっくりきて、美味しくいただいています」(40代、女性)と話す人もいた。
初対面同士でもすぐに打ち解け、和気あいあいと盛り上がる
晃子さんは「角打ちは、そもそも”お試し酒”の文化です。そやから、人もお酒もアテも、初めてのものに出会う場所でありたいんです」と目を細めて微笑む。
そして、「日本は季節で食べ物の旬が変わるのが特徴です。うちに通うと歳時記を感じられます。だから何度でもお越しいただきたい。何より、旬のものは自然と体にいいんですよ」と話す。「角打ちをやっていて、いちばんうれしいのは、『こんな美味しい酒に出会った。こんな美味しいアテを発見した』とお客さんに言うてもらうときです」と語った。
薬膳アテにはドライな焼酎ハイボールがよく合う。「スッと飲みやすいもん。甘さがないのもええな。特に若い人は好きよ。女性にも流行りだしてる」(前出の同好会員)。
やがて、常連のひとりが、「食べて、飲んで、翌日は元気に。体にええアテで一杯いこや」と缶を掲げた。
さぁ、焼酎ハイボールで乾杯だ。
大人気の手作りおばんざい。特製薬膳キッシュは辛口の焼酎ハイボールによく合う
■松岡商店
【住所】兵庫県神戸市長田区若松町2丁目2-8
【電話】078-611-0388
【営業時間】月~金14~20時 (水のみ13~20時) 土祝14~19時 日休。
焼酎ハイボール500円、ビール小びん500円、薬膳キッシュ600円、薬膳&発酵おばんざい3種盛り1500円

