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【書評】『わたしの文芸創作』 あらゆる創作はノウハウではなく、感性を大切に持ち運ぶことで積み上げられていく

『わたしの文芸創作』/石田千・著

『わたしの文芸創作』/石田千・著

【書評】『わたしの文芸創作』/石田千・著/港の人/2200円
【評者】武田砂鉄(フリーライター)

 著作の大半を読んできた作家が大学の講義で文芸創作をおこなった記録となれば、手に取らずにはいられない。2020年度の講義なので、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、Eメールでのやりとりで俳句やエッセイの創作を教えていくスタイルとなった模様。

 学生たちの俳句、当初はぎこちなかったものの、徐々に艶が出てくる。先生からの課題の提示がいい。俳句に加えてエッセイを添えてほしいとお願いするのだが、「散歩をしてください、近所を逍遥すれば、すれ違うひと、道ばたの草に、お店のなかにも、この季節ならではの衣食住に出会えます」とのこと。文章が動き出しそうだ。

 日記を書くにあたり、毎週テーマを決める。その第1週のテーマは「きょうの光」。「その日、まぶしくうつったもの。実際の光でも、だれかの言葉やおこないなど心がきらりと輝いたことでもかまいません」とのこと。書きたくなる。

 世の中には、文章を書くためのノウハウを記した本がたくさんあるが、その手の本を開きながら、「そもそもノウハウなんてものが存在してしまっていいのだろうか」という問いが生まれる。そうではなく、もっと、その人の心の中を泳いでいる感性のうち、このあたりを掬うと良いのでは、との感覚が必要だろう。たとえば、「おとなになるということは、ばかばかしいことも、一生懸命楽しめるということです。ばかばかしいことにも、ひとつはかならず発見があるものです」というように。

 学生からの質問を受け付ける週には、「文章を書く時に、意識していることはなんでしょうか」との問いに対して「温度と湿度です」と答えている。それってどういうことだと悩む。悩めば、頭の中に言葉が生まれる。あらゆる創作はノウハウではなく、感性を大切に持ち運ぶことで積み上げられていくのだ。

※週刊ポスト2026年1月30日号

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