チャウシェスク一覧

【チャウシェスク】に関するニュースを集めたページです。

金正恩氏(左)と有力後継者の金与正氏(EPA=時事通信フォト)
北朝鮮は国家レベルの危機 クーデターが起きないのはなぜか
 金正恩・朝鮮労働党委員長につきまとう健康不安説、そして新型コロナウイルスが国内で蔓延しているとみられる北朝鮮。こうした国難ともいえる緊急事態は過去に幾度もあったが、独裁国家につきもののクーデターが起きないのはなぜか。ジャーナリストの宮田敦司氏がレポートする。 * * * 金正恩氏の動静報道が長期間ないことで浮上した「重篤説」は、5月1日に映像つきの動静報道が再開されたことで、ひとまず終息した。しかし、体重130kgの正恩氏が、多くの生活習慣病を抱えていることは間違いない。重篤にはならなくとも、健康不安は常につきまとう。 このような良好とはいえない健康状態の影響で、正恩氏が執務不能になることが予測されていたかのように、正恩氏の妹である金与正氏がメディアに登場することが増えてきた。ただ単に妹として露出しているのではなく、労働党の要職へ就任するなど実力を伴った露出である。 正恩氏の父・金正日は、正恩氏とともに与正氏も後継者候補としていたともいわれている。このため、正恩氏の身に緊急事態が起きた場合は、与正氏が代行を務める可能性が高い。場合によっては後継者ということもあり得る。◆世界でも特異な「独裁国家」 たとえ一時的な代行者であれ、独裁国家の最高指導者が最も恐れるのは、実力組織である軍が自らに銃口を向けることである。北朝鮮の最高指導者の脳裏には、ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクが自らの軍隊により銃殺刑に処せられた場面が焼きついていることだろう。 チャウシェスクと正恩氏の祖父・金日成は親交があり、金日成の統治手法に感銘を受けたチャウシェスクが、金日成の統治手法を真似していたのだから、なおさらだろう。チャウシェスク政権は1960年代から1980年代にかけての24年間にわたり存続したわけだが、70年以上存続している北朝鮮とは比較にならない。 北朝鮮は世界的に見ても特異な独裁国家である。3代(金日成・金正日・金正恩)にわたって最高権力を世襲しているからだ。世襲を行った独裁国家はシリアのアサド政権などの例があるが、軍を完全に掌握し、3代世襲に成功したのは北朝鮮だけである。◆「政権は銃口から生まれる」 毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と述べたが、北朝鮮軍(朝鮮人民軍)の特異なところは、毛沢東の言葉どおりに1948年9月9日の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)建国よりも前である同年2月8日に創設されていることである。 このような特異な軍隊である北朝鮮軍を、金ファミリーはいかなる方法で70年以上にもわたり忠誠を誓わせてきたのだろうか。◆小規模クーデターは過去にあったが…… 例えば、現在、北朝鮮でも蔓延していると思われる新型コロナウイルス。北朝鮮は感染者の数などを一切公表していないが、首都平壌以外の病院では、点滴用のバッグをビール瓶で代用し、メスの代わりにカミソリを使用するような深刻な医療水準にあることから、治療されないまま放置された多くの患者が死亡していることは想像に難くない。 このような医療水準になってしまったのは、正恩氏の祖父の代からの失政によるものだ。医療分野だけでなく様々な分野の政策が失敗し、常に非常事態にある北朝鮮で、ダメ押しのように発生したのが今回のコロナウイルスの蔓延である。 こうした国家レベルの危機は過去に何度もあったのだが、諸悪の根源である最高指導者を打倒するために、なぜ軍がクーデターを起こさないのかと思われるだろう。じつは、小規模なクーデターや暴動は何度か起きてはいるのだが、未遂に終わるか、迅速に鎮圧されている。 結論から言えば、北朝鮮軍ではクーデターは成功しない。と言うより、「起こせない」と言ったほうがより正確だろう。これは、旧ソ連軍が最後まで政治に介入しなかった(介入できなかった)ことと共通している。 このような北朝鮮軍が置かれている状況についての理解を深めるためにも、本稿では旧ソ連軍と政治の関係について触れることにしたい。北朝鮮軍は旧ソ連軍を真似て作られているからだ。◆軍は党に従順な「ヒツジ」 1918年の赤軍創設以来のソ連軍史は北朝鮮と同様に、軍に対する粛清、共産党の監視・抑圧装置強化の過程でもあった。軍史研究家ビクトル・ゾトフ氏は、「その結果、国外に対しては威圧的な大グマだが、党にはヒツジのように従順で、自分の意思を持たない巨大集団が育てられた」と指摘する。 旧ソ連に政治危機の兆しが見えるたび、西側では軍が主導権奪取へと動く危険が幾度も論じられた。だが、共産党自体の断末魔によって引き起こされ、自滅した党保守派クーデター(1991年8月)を除けば、軍が動いた例はない。 10月革命の時点で、ボリシェビキ(レーニンを指導者とするロシア社会民主党左派)は武装労働者から成る「赤衛軍」2万人に加え、政治煽動を通じて臨時政府側の陸海軍兵士21万人を自陣営に引き込み、革命を支えた。続いて、軍事人民委員(国防相)のトロツキーは、旧帝政軍を主体とする「白衛軍」や外国干渉軍との国内戦を戦う必要上、旧帝政軍将校2万2000人を赤軍に編入した。◆軍内を監視する「政治将校」を配置 同時に、これら将校の反革命言動を監視するため党活動家(イルクン)の「軍事委員」を配置する措置が決まり、ソ連崩壊まで存続する政治将校制度の基盤が築かれた。 さらに、1917年末に発足した秘密警察「反革命・サボタージュ・投機行為取締非常委員会」は、赤軍内に監視網を設置。これは「特務部」網として、後の国家保安委員会(KGB)まで引き継がれた。 米ハーバード大のマーク・クレイマー博士は、「他の国でも防諜担当官が軍部隊に配置されるものの、ソ連軍の場合、秘密警官が一般将兵を装って潜入し、粛清の口実を探すなど極端な形態を生んだ」と指摘する。◆軍の隅々まで「秘密警察」を配置 また、KGB要員は軍の中隊レベルにまで配属されており(北朝鮮の秘密警察である国家保衛省要員も中隊レベルまで配属されている)、固有の指揮系統を通じ上部へ報告する。些細なイデオロギー的逸脱も許されない綿密な監視・摘発体制が保持されていた。 軍史に詳しいアンドレイ・リャボフ氏(ゴルバチョフ財団)は、「ソ連史を通じて、軍は共産党の抑圧政治を支える基盤であると同時に、自らボリシェビキ革命、スターリン主義の暴虐の被害者であった。軍は、党の圧政下での生存を運命づけられ、決して自ら権力を握る存在ではなかった。事あるごとにソ連の軍事クーデター発生を心配した西側は、連邦崩壊までその真理を理解しなかった」 と強調する。◆軍に対する“四重”の監視 旧ソ連軍が政治将校とKGBの二重監視だったのに対し、北朝鮮軍では総政治局に所属する政治将校、秘密警察である国家保衛省、軍の情報機関である保衛局(旧・保衛司令部)、さらに労働党組織指導部直属の通報員による四重の監視体制が敷かれている。このため、1995年以降、3回にわたりクーデターを起こそうとしたが、すべて未遂で終わっている。 韓国に亡命した元北朝鮮軍上佐(大佐と中佐の中間の階級)の崔主活(チェ・ジュファル)氏によると、総政治局は軍幹部が党の指示に忠実であるかを常に調べ、労働党組織指導部に報告するという。将校は全国に約30ある軍専門学校を卒業した労働党員である。 その中でも将軍まで上りつめる軍人は、抗日闘争や朝鮮戦争の功労者の子孫が通う「万景台革命学院」の卒業者が多く、金日成、金正日父子の教えに極めて忠実だという。また師団の移動には、兵力を束ねる総参謀長だけでなく、軍総政治局、軍政治保衛局の認可が必要で、崔主活氏は「師団を動かしてクーデターを起こすのは極めて難しい」と予測する。 北朝鮮には「自分の背中も他人」という言葉があるという。つまり、あまりの監視体制の厳しさに絶対に他人を信用できないだけでなく、寝言で体制批判をしただけでも強制収容所送りになるわけだから、自分すら信用できなくなる、ということである。◆“末期状態”になるまでクーデター不可能 北朝鮮軍がクーデターを起こすとすれば、秘密警察や治安機関、金正恩の親衛隊ともいえる護衛司令部が同時に寝返るなど、体制維持システムが末期状態を呈した時であろう。つまり、余程の条件が整わない限り、クーデターは起こせないようになっているのだ。 旧ソ連軍について、「国外に対しては威圧的な大グマだが、党にはヒツジのように従順で、自分の意思を持たない巨大集団が育てられた」というビクトル・ゾトフ氏の指摘は、北朝鮮軍にも当てはまるのではないか。 北朝鮮軍はクーデターを起こさない。そして、独裁政権に従順な守護神としてこのまま存続する。厳格な監視体制が機能していることにより、国家レベルの危機に直面しても独裁政権の脅威にはならない北朝鮮軍だが、周辺国に対する脅威は、北朝鮮が民主化され、軍が解体されるまで続くのである。
2020.05.15 07:00
NEWSポストセブン
チャウシェスクのトンデモ政策 不老不死薬開発の研究所設立
チャウシェスクのトンデモ政策 不老不死薬開発の研究所設立
 絶対的権力と富を手に入れた独裁者が、最後に求めるのが不老不死の肉体だ。己の命のためなら手段を選ばない。ルーマニアの独裁者チャウシェスクの「生への執着」はどんなものだったのか。 1960年代からルーマニア共産党政権の頂点に立ち、独裁的大統領として25年間君臨したニコラエ・チャウシェスク。権力の座についた当初、彼の評判はそれほど悪くはなかった。しかし、妻のエレナが口を挟むようになってから、人口増加のために避妊を禁止するなど、とんでもない政策が実施され状況が一変する。 それを象徴するのが「不老不死薬の開発」のために設立された「国立加齢科学研究所」だ。初代所長を務めた老齢医学の女性研究者、アナ・アスランが、麻酔薬のプロカインに硫黄やナトリウムなどを加えて「ジェロビタールH3」という薬を開発。国家元首のアンチエイジングに利用した。当時、この薬を求め、世界から多くの政治家や有名人が訪れたという。 チャウシェスク夫妻の処刑から28年。現在でも同研究所は、ルーマニアのアンチエイジング研究や診療の中心的な存在となっており、同国政府観光局はアンチエイジングツアーを日本向けに売り出している。※SAPIO2017年8月号
2017.08.03 16:00
SAPIO
激太り目立つ金正恩に欧州から医師招く「特別医療体制」
激太り目立つ金正恩に欧州から医師招く「特別医療体制」
 最近激太りが目につく北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、家族や最高幹部とともに検診や治療を受けるのが平壌の烽火(ボンファ)診療所だ。 ここは以前から金一族のお抱え診療所として注視されてきた。2008年、父親の金正日の病状悪化が伝わると、米国や韓国は診療所の衛星写真で車両の出入りを確認して動静を探っていた。デイリーNKジャパン編集長でジャーナリストの高英起氏が解説する。「金正恩は食生活を含めた健康面を管理する機関と、医療面をサポートする烽火診療所の二本柱で心身をケアしています。北朝鮮国営メディアを見る限り、北朝鮮人医師のレベルはともかく、それなりに先端機器を揃える医療機関のようです」 2014年秋には杖をつきながら国内視察する金正恩の様子を北朝鮮の労働新聞が報じ、韓国メディアは「烽火診療所でフランス人医師から足首の関節手術を受けていた」と報じている。 北朝鮮の幹部クラスは欧州など海外で治療を受けることはあるが、金正恩の場合、危機管理上国外に出て治療を受けるとは考えにくい。高氏によれば、烽火診療所に招かれて治療を行うホームドクターが欧州に複数いると考えられるという。 また、先日暗殺された金正男氏も烽火診療所で生まれ、その存在をしばらく隠されてきた。ある意味、金一族の表も裏も知るのがこの診療所と言える。 チャウシェスク政権時代のルーマニアと北朝鮮は同じ社会主義国家として気脈を通じ、ルーマニア人医師を招くことが多かった。ルーマニアの独裁政権崩壊後、北朝鮮の指導者層の治療はフランス人医師に引き継がれたとされている。 昨年秋には北朝鮮保健省1局出身で、中国・北京の北朝鮮代表部に在籍する幹部が脱北した。この人物は北京から金正恩の健康に役立つ医薬品や医療装備品を調達していたと語った。 高度な医療機器をこうした役人に調達させて烽火診療所まで運ばせ、欧州から医師を招いて診察を受けるのが金正恩の特別医療体制とみられる。※SAPIO2017年8月号
2017.07.08 16:00
SAPIO
豪華絢爛の館 独裁者たちの「儚き宮殿」7選
豪華絢爛の館 独裁者たちの「儚き宮殿」7選
 自らの権威を見せつけるために独裁者たちは巨大な「宮殿」を建設した。ここでは7つの事例を紹介しよう。【トルコ大統領宮殿(アンカラ)】──裁判所命令を無視し建設したタイイップ・エルドアン大統領御殿 エルドアン大統領は2014年に就任すると、それまでの公邸に「ゴキブリが出る」という理由で首都アンカラ郊外に新公邸を建設。建設費約772億円。1150室ある宮殿は「黄金の便座」まであると野党から非難され、大統領は誹謗中傷だと野党党首を訴える騒動に発展した。黄金の便座の真相は藪の中だ。 裁判所命令に反し環境保護地域に強行して建設された宮殿は「独裁の象徴」と批判を受けた。東京ドーム4個分以上の敷地に建ち、維持費は毎月5400万円かかるとも言われる。【ルーマニア・チャウシェスク大統領公邸(ブカレスト)】──黄金のバスルームを生んだ恐怖政治部屋数3000室以上 公邸「プリマベリイ・パレス」(国民の館)は1960年代にチェウシェスク夫妻の指示で建設。建築物としては米ペンタゴンに次ぎ世界2位の規模を誇る。恐怖政治の裏で自らは地下シェルターや映画館まで完備した宮殿で暮らした。1989年の政権崩壊から26年を経た今年3月、一般公開されることになった。公開されたチャウシェスク邸では大統領夫妻の遺留品も公開された。贅の限りをつくした豪邸には黄金でしつらえた部屋も数多くあった。 チャウシェスク大統領と並び、妻エレナも大量虐殺などの罪で処刑された。【ソ連・スターリンの別荘(ロシア・ソチ)】──暗殺を恐れた独裁者は地下に秘密部屋を作った虐殺者数2300万人といわれるスターリン。リウマチに悩むスターリンが黒海沿岸のソチを一大保養地として整備し、1937年に別荘を建設、1953年に死去するまで生活した。一見質素だが、暗殺を恐れた独裁者は地下17mに防空壕を作っていた。現在は宿泊可能なミニホテルと博物館になっている。ソチには現在プーチン大統領の別荘もある。【リビア・カダフィ家別荘(トリポリ)】──豪邸のプールに政権崩壊を告げる銃声  石油による富を収奪して築き上げた別荘地にはスーパーマーケットやダイビング場、テニスコート、サッカー場、レストラン、クリニックまであった。カダフィ大佐は1969年のリビア革命から約40年間独裁政権を維持したが2011年のリビア内戦で反体制派に殺害されたとされる。その後、邸宅や別荘は反体制派により荒らされ占拠された。死亡時には血塗れの死体を取り囲んで歓声を上げる民兵の映像が世界に流れた。 40年の独裁が終わり、民衆は独裁者の占有した15兆円といわれる富を分かちあった。【イメルダ・マルコス元比大統領夫人の靴コレクション(マニラ)】──宮殿に残った大量の高級靴3000足の靴 1965年、マルコス大統領の就任以来、マラカニアン宮殿で贅を極めた暮らしを送る。その象徴が1986年に米国亡命した際に宮殿で見つかった3000足の靴。靴コレクションの一部はマリキナ靴博物館に展示されている。イメルダはフィリピンに帰国後、国政に復帰。2014年には85歳の誕生日を靴を象ったケーキで祝うニュースで話題になり、「鋼の蝶」と呼ばれた女傑ぶりは健在。マニラ郊外の靴博物館には現在600足ものイメルダ夫人の靴が展示されている。【ウクライナ・ヤヌコビッチ大統領私邸(キエフ)】──混乱のウクライナにテーマパークのような豪邸 2014年の政権崩壊直後、ヤヌコビッチ前大統領の豪邸が一般公開された。140haの敷地にはゴルフ場や動物園まであった。前大統領が廃棄した文書から約40億円のシャンデリアや、飼育する動物のネームプレートに100万円も費やしていたことまで明らかになった。 豪邸の主は逃亡、現在、公金横領などの容疑で国際指名手配されている。潜伏を続けるヤヌコビッチ氏の所在は現在も掴めていない。【イラク・フセイン大統領像(バグダッド)】──臀部の競売価格3000万円 2003年、米軍のイラク攻撃で独裁政治の終焉のシンボルとして広場から引き倒されたフセイン銅像。これはフセインの65歳の誕生日を記念して設置されていたもの。 24年の独裁時代には個人崇拝を徹底し、銅像とポスターは「国民の数より多い」とも揶揄された。銅像の臀部の一部は2011年に英国で競売にかけられたが、約3000万円の最低入札価格に希望者はいなかった。全世界に配信された銅像の倒壊シーンは、民衆ではなく米軍によるものだった。※SAPIO2017年1月号
2017.01.01 07:00
SAPIO
井上章一氏 建築で虚勢をはる独裁者のいとなみ
井上章一氏 建築で虚勢をはる独裁者のいとなみ
 独裁者は世に自身の権威を見せつけるために巨大な宮殿を建てる。かつてのルーマニアの独裁者、チャウシェスク大統領の公邸はその最たるものだろう。その部屋数3000室で、建築物としては米ペンタゴンに次ぎ世界2位の規模を誇る。1989年の政権崩壊から26年を経た今年3月、一般公開されることになった。そんな独裁者と建築の関係について建築史家の井上章一氏が考察する。 * * * チャウシェスクの宮殿には、政権の転覆後、おとずれたことがある。その偉容には、やはり圧倒された。宮殿側のガイド嬢も、これが世界一の規模をもつと、随所で説明していたものである。たとえば、ここはヴェルサイユ宮よりりっぱにできている、などなどと。 そういう案内ぶりに接して、私は皮肉のひとつも言いたくなった。よかったですね、独裁者がすばらしい観光資源をのこしてくれて、と。まあ、もちろんガイド嬢の前ではだまっていたのだが。 いわゆる独裁者が、みな建築で自分の権勢を見せつけたがるわけではない。キューバのカストロやエジプトのナセルは、それらしいことをしなかった。私はこの一点で全体主義体制を分類することも、できると思っている。ざんねんながら、政治学者はあまりそういうことを考えてくれないが。 建築で虚勢をはりたがる独裁者には、ある種の精神的なかたよりが、ひそんでいよう。だが、そのいとなみには、全体主義国家をささえる機微もある。 大規模な建設作業は、多くの労働者に仕事の機会をもたらすだろう。工事現場付近の消費も、活性化させていく。それでうるおった人びとは、独裁者をありがたく感じるかもしれない。あの人は自分たちの自由をみとめないが、儲け口をあたえてくれた、と。そういう想いをあおりつづけるために、建設ラッシュがとめられなくなる体制は、あると思う。ナチズムは、そちらへ傾斜した典型例であろう。 そう考えれば、やっていることは戦後日本の建設政策とも、それほどかわらない。周知のように、日本もスクラップ・アンド・ビルドをくりかえし、富をきずいてきたのである。あるいは、自民党の長期政権を安定させもした。もちろん、独裁者の宮殿と公共工事でできた施設を、いっしょにしてはいけないのだろうけど。【PROFILE】1955年京都府生まれ。京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。建築史家。国際日本文化研究センター教授(建築史、意匠論)。風俗、意匠など近代日本文化史を研究。『京都ぎらい』(朝日新書)、『関西人の正体』(朝日文庫)など著書多数。※SAPIO2017年1月号
2016.12.07 07:00
SAPIO
発禁のヒット本 ヒトラーら独裁者と習近平の同じ末路を予言
発禁のヒット本 ヒトラーら独裁者と習近平の同じ末路を予言
 2012年に米国へ亡命した反体制作家・余傑氏の『中国教父 習近平』は昨年3月に香港の出版社で発売されるやベストセラーとなり、いまなお異例の売り上げを続けている。しかし中国本土での販売は禁止され、香港からの持ち込みも厳しく禁じられている。中国当局がそこまで警戒する本には、一体何が書かれているのか。 毛沢東主義に走り権力を掌握する習近平を、余傑氏はナチスドイツのヒトラーになぞらえる。〈ナチス政権の滅亡後、多くの人が「なぜナチズムはあれほど急速に広まったのか。かくも聡明で理性的なドイツ人が、なぜヒトラーの催眠にやられて言うなりになっていたのか」と困惑したが、これこそが今の共産党政権がそう簡単に瓦解しない理由である。 習近平は政権の座について以来、急速にファシズム化している。国内は強い力でねじ伏せて安定を保ち、対外的には大胆に動き出している。今や世界の「台風の目」のようなものだ。(中略)「ヒトラーはなぜ生まれたか」を答えることができれば、「習近平はなぜ生まれたか」についても答えることができるだろう。2人が台頭していった軌跡は、同じ線を描いている〉 一方で余傑氏は、ヒトラーと同じように習近平もまた、すでに「破滅」への道を歩み始めているという。〈中央から地方に至るまでの共産党組織全体が、「狸寝入り状態」になっている。(中略)または「脳死状態」である。中央と地方はお互いを欺き合い、(中略)人民は党に忠誠を誓っているフリをする〉〈習近平の話を聞いていると、もはや周囲の者たちの意見が耳に入らなくなっているのではないかと思う。中国がかつて進んだことのない暗闇へと狂ったように向かっているのだ〉 そしてその暗闇の果てにあるものをこう結ぶ。〈火山はいつか爆発し、黄河の堤防も決壊する。習近平の運命を中国の歴史に照らして見るなら、隋の煬帝(ようだい)、明の崇禎(すうてい)、清末の愛新覚羅載ホウだろう。世界的に見るなら、ナチスのヒトラー、ルーマニアのチャウシェスク、イラクのフセイン、リビアのカダフィである〉  習近平は、ヒトラーをはじめとした独裁者たちと同じ末路を辿ると予言するのだ。政府にとってはこれ以上ない屈辱である。※SAPIO2015年7月号
2015.06.23 07:00
SAPIO
中国反体制本がヒット 習近平はヒトラーと同じ末路にと予言
中国反体制本がヒット 習近平はヒトラーと同じ末路にと予言
 4月30日に起きた新疆ウイグル自治区での爆破テロ事件で、ついに反政府活動の刃が、中国・習近平国家主席自身に向けられている。 そんな中、中国政府がもっとも恐れる一冊の本が刊行された。2012年に米国に亡命した反体制作家、余傑氏が書いた『中国教父 習近平』である。香港の出版社から3月に出版されて以来、香港では大きな話題となっている。 表紙にはでかでかと『中国教父 習近平』とある。教父とは、「ゴッドファーザー」という意味だ。余傑氏は、習近平がハリウッド映画『ゴッドファーザー』のファンだったというエピソードに着目し、同書で<『ゴッドファーザー』は習近平にとっての政治の教科書だった>と指摘している。<共産党は中国最大の黒社会(マフィア)である。トップである習近平はすなわち中国のゴッドファーザーと言える。ニューヨークのゴッドファーザーに比べると、まさしく「青は藍より出でて藍より青し」である。彼の支配する人口、資源は果たして何倍であろう>(同書より) そうして余傑氏は、いま中国で形成されつつある「習近平主義」について解説していく。曰く、<習近平の言う「中国の夢」とはゴッドファーザーの夢>だという。<経済的には中央の国営企業に独占的な地位を与え、(中略)内政では暴力による“治安維持”の姿勢を強め、軍事的には軍事費を急速に増強している。外交的にはトウ小平の「韜晦(とうかい)主義」(※注1)の遺訓を捨てて、対外拡張に向かっている> 習近平の野望は、共産党設立100年(2021年)を迎えることで毛沢東に肩を並べることだという。<習近平は肉体的には習仲勲の息子だが、精神的には毛沢東の息子である> さらに余傑氏は、習近平をヒトラーにまでなぞらえている。<ナチス政権の滅亡後、多くの人が「なぜナチズムはあれほど急速に広まったのか。かくも聡明で理性的なドイツ人が、なぜヒトラーの催眠にやられて言うなりになっていたのか」と困惑したが、これこそ今の中国共産党政権がそう簡単に瓦解しない理由である。 習近平は政権の座に就いて以来、急速にファシズム化している。(中略)今や世界の「台風の目」のようなものだ。(中略)「ヒトラーはなぜ生まれたか」を答えることができれば、「習近平はなぜ生まれたか」についても答えることができるだろう。2人が台頭していった軌跡は、同じ線を描いている> だが、一方で余傑氏は、<習近平の夢は実現不可能だ>と断言する。<人権意識が低く、環境汚染とエネルギー消費の激しい「中国モデル」は、そう長くは続かない。奇形的な市場経済(事実上、国家が資本主義を独占している)はもはや終焉に達している。政治制度と経済制度の間にある矛盾は解決できず、習近平は安穏の10年間の任期を安穏と過ごすことなどできないだろう><中央から地方に至るまでの共産党組織全体が、「狸寝入り状態」になっている。(中略)または「脳死状態」である。中央と地方はお互いを欺き合い、(中略)人民は党に忠誠を誓っているフリをする> そしてこう結論付ける。<火山はいつか爆発し、黄河の堤防も決壊する。習近平の運命を中国の歴史に照らして見るなら、隋の煬帝、明の崇禎、清末の愛新覚羅載だろう。世界に見るなら、ナチスのヒトラー、ルーマニアのチャウシェスク、イラクのフセイン、リビアのカダフィである> 習近平の命運は、ヒトラーをはじめとする独裁者らと同じ末路を辿ることになると予言するのだ。(※注1)トウ小平は、才能を隠して控えめにふるまい、なすべき事はなすという「韜晦外交」を提起し、尖閣諸島の領有権棚上げなどを主張した。※週刊ポスト2014年5月23日号
2014.05.18 07:00
週刊ポスト
独裁者から夜の付き合いと愛人強要されたコマネチさんの悲劇
独裁者から夜の付き合いと愛人強要されたコマネチさんの悲劇
 カダフィ(リビア)やムバラク(エジプト)といった独裁者たちが、長期にわたる腐敗と失政の報いを受けようとしている。権力の椅子にしがみつこうとする孤独な男たちには、様々な共通項が見出せるが、その権力を引き継がせようとする「息子」たちが何の資質も持ち合わせていない放蕩息子ばかりだという共通点は興味深い。落合信彦氏が解説する。 * * * カダフィの放蕩息子たちの見るに堪えない振る舞いは、独裁者の息子としては、決して例外的なものではない。 私がまず思い出すのは、冷戦下の東欧で秘密警察「セキュアリターテ」を使って国民生活を逐一監視し、飢餓に苦しむ一般市民を差し置いて自分と家族にだけは豪奢な生活を許していたルーマニアの独裁者ニコライ・チャウシェスクとその息子のことである。 1989年12月24日に起きたルーマニア革命により、チャウシェスク夫妻は銃殺処刑された。私が首都・ブカレストに取材に入ったのはその直後のことだったが、市内の光景は異様だった。 日々のパンも手に入れられないような国民が暮らしているというのに、中心部にはチャウシェスクが建設させていた地上10階建て、3000以上の部屋を誇る宮殿がそびえ立つ。その正面の通りは、チャウシェスクが出した「パリの大通りよりも広い通りを!」という指示に基づき、シャンゼリゼ通りよりも1m広い幅で作られた。地下道は戦車も通れる。 財政破綻寸前だったルーマニアで、この道を真っ赤なフェラーリで疾走していた男がいた。それが、チャウシェスクの次男・ニクであった。 ニクが車を乗り回す時はセキュリティが張り付き、大通りには10mおきに警察官が配備された。一般市民の生活水準など無視したチャウシェスク一族の象徴であったと言えよう。 ニクは、未成年のうちから酒を飲んではお気に入りの車を運転し、あげくに交通事故を起こし、またある時はレイプなどの犯罪行為に走っていたという。 もちろん、彼が罪を問われることなどない。「俺を一体、誰だと思っているんだ」その一言で、ルーマニアの全ての警察官は独裁者の息子にひれ伏すのである。 そんな男でも、父親の威光があれば、国や党の要職が与えられる。32歳の若さでルーマニア共産党中央委員に選出された。これでは本人が行ないを改めるはずはない。 そんなニクの毒牙にかかり、人生を狂わされた女性がいる。 1976年のモントリオール五輪の体操で史上初めて10点満点を叩き出し、金メダルを獲得した「ルーマニアの白い妖精」ことナディア・コマネチであった。 国民的ヒロインは、独裁者の息子から毎晩のように夜の街へ付き合うように求められ、愛人関係となることを強いられた。もちろん、当時のルーマニア国民に、チャウシェスク家に逆らえる人間など一人もいない。身も心もボロボロになったコマネチは、命からがらオーストリア経由でアメリカへと亡命する。革命の1か月前のことであった。 ルーマニア革命が起きた時、ニクは別の愛人と車で逃走しようとし、逮捕された。連行されるニクの愚かで哀れな姿は国営放送で生中継され、視聴した国民は大いに溜飲を下げた。 その後、横領罪などに問われた裁判中に、ニクは肝硬変でこの世を去った。ストレスや深い思考、自省の念などと無縁のまま40年近く生きた男にとって、「本当の世界」はあまりに苛酷だったのだろう。※SAPIO2011年5月25日号
2011.05.19 16:00
SAPIO

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京都の街を歩く舞妓のイメージ(写真/イメージマート)
元舞妓の〈16歳飲酒〉〈お風呂入り〉告発に、花街関係者も衝撃「未成年飲酒には厳しく対応しているはず」
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不祥事を理由に落選したはずなのに、比例で復活されては…(左は塚田一郎氏、右は中川郁子氏/写真=共同通信社)
「不倫路チュー」「USBは穴に…」失言・不祥事で落選しても比例復活するゾンビ議員たち
週刊ポスト
注目を集めるNHK吉岡真央アナ
「ポスト和久田麻由子アナ」候補のNHK吉岡真央アナ 替え歌ダンスで“キャラの強さ”際立つ
週刊ポスト
前田敦子と篠田麻里子の女子会姿をキャッチ
前田敦子、篠田麻里子と六本木で4時間半女子会 元夫・勝地涼との関係は良好に
女性セブン
謎めいたバッグを持つ広末涼子
広末涼子、“破壊力強すぎ”コーデは健在「背中に蜘蛛」私服に続き目撃された「謎バッグ」
NEWSポストセブン
結婚し、日本メディアが情報をキャッチしづらいNYで、デイリーメールが追跡取材(写真/JMPA)
小室圭さん・眞子さん夫婦が「離婚で終わったとしても…」英デイリー・メールが報じた「茨の道」
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