ビジネス

「日本と唐様で書く三代目」豊臣統一と安倍晋三が日本を滅ぼす

内閣支持率は急落している(時事通信フォト)

 俗に三代目は安定期と混乱期の端境期に君臨することが多いとされる。分断が懸念される社会、令和日本はどこへ向かおうとしているのか。覆面作家にして経済記者、『トヨトミの野望』『トヨトミの逆襲』の著者である梶山三郎氏がレポートする。

 * * *
◆株主総会で突然飛び出した「ロバと老夫婦」の話

 新型コロナウイルスのパンデミック不況は、1930年代に世界を襲った大恐慌のように長期戦になると警鐘を鳴らす識者は多い。経済を復調させるためにロックダウンの封鎖を緩めれば、感染者数が増大し、封鎖すれば経済が落ち込む、その繰り返し……。

 この先いったいどうなるのか、どの企業も今年の業績見通しを示せない中、時価総額22兆円で日本一の巨大企業トヨタが業績予想(2021年3月期決算)を公表したのは5月12日だった。メディアは、これを「営業利益は8割減、5000億円に急減する」と一斉に報じた。

 そして6月11日。トヨタ自動車の株主総会で、最初に質問に立った株主が「(2021年3月期決算での営業利益の見通し)5000億円は当てになるのか。なぜ予想の数字を出したのか」と問いただした。


Amazonで無料ダウンロード

 豊田章男社長は「自動車産業はすそ野が広い。“当てになる数字”ということではなく部品メーカーなど取り引き先に対してトヨタが目指す“一つの基準”を示した」と答え、すぐにこう切り返した。

「ところで、ロバと老夫婦の話をご存知ですか。ロバを連れながら夫婦が歩いている。すると、なぜロバに乗らないんだと言われ、お爺さんがロバに乗り、お婆さんが歩いていると、ずいぶん威張った旦那だと言う人がいる。逆にお婆さんが乗っていると、あの旦那は奥さんに頭が上がらない、と言う。二人が乗ると今度はロバがかわいそう、と言い出す。最近のメディアを見ていると“何がニュースかは、自分で決める”という傲慢さがある」

 なにをやっても新聞は悪いことしか書かない、ということを言いたかったのだろう。このやり取りを聞いていたトヨタ関係者が、豊田社長がいら立っている事情を説明してくれた。

「日頃から豊田社長は担当記者に対して、危機感がなくなるのでトヨタをほめ過ぎないでほしいと言っているため、多くの担当記者はそれを真に受けて『急落8割減』と書いた。しかし、今回はそれが気に入らなかった。競合他社が揃いもそろって業績見通しを出せない中、トヨタだけはあえていま予想できる範囲で数値を出したことや、何とか黒字を維持しようとする姿勢を評価してもらいたかったからでしょう。要はメディアに褒めてもらいたかったわけです」

 株主総会後の記事は、一転、「トヨタは大丈夫」といったような論調が大勢を占めた。さらには、名優の香川照之を使い、「リーマン・ショックの時は、過去最悪の4600億円の赤字決算に陥ったのに、それを上回るコロナ・ショックで5000億円の黒字を出す決意表明だ」と解説する自社のオウンドメディアやテレビコマーシャルを展開している。

 自分の価値観と合わない記事やメディアを徹底的に批判、排除する姿勢といえば、安倍晋三首相の右に出る人はいないだろう。コロナ危機対応をめぐる最近の首相会見でも、辛口の記事を書くフリーの記者を指名しなかったことが問題になったことは記憶に新しい。

 しかしそんなメディアコントロールの努力も甲斐なく、なかなか届かない「アベノマスク」、国会でも紛糾した中小事業者への持続化給付金業務の丸投げ発注をめぐる「前田ハウス」問題と、新型コロナウイルス対策に関して安倍政権の打つ手がことごとく失敗したあげく、通常の10倍とも言われる破格の1億5000万円を選挙資金として注ぎ込んだ河井克行・案里夫妻が東京地検特捜部に買収容疑で逮捕され、内閣の支持率は急落した。

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン