国際情報

日本がODAの明細を中国語で公開すれば中国幹部は狼狽する

 領土、経済、軍事と中国にやられっぱなしの日本だが、その中国に日本はいまだ経済援助を続けていることをご存じか。日本の対中ODA(政府開発援助)の総額は「ローン」も入れれば6兆円を軽く突破している。一体、何のための援助か。ジャーナリストの青木直人氏が報告する。

******************************
 中国は2年後に始まる第12期5年計画の最大の課題を「環境」「省エネ」対策においている。利益の上がらないこの種の対策に、地方政府や企業はカネを使いたがらない。
 
 そのための切り札が公的融資、なかでも条件のいい日本からのODAなのである。中国が期待しているのは日中共同出資の「日中省エネ環境基金」である。「共同出資」とはいえ、中国側は内部向けに「これは円借款に代わるあらたな援助の受け皿」と公言している。

 日本に対して無法の限りを尽くす中国にやすやすと援助復活をさせることはない。そもそも中国が自国の環境対策に自分でカネを出すのが当たり前の話なのだ。

 そして日本は、対中援助の広報と情報開示をすべきである。外務省ホームページのODAには日本語だけで、中国語版がない。これでは中国向け広報にはならない。中国人が中国国内からアクセスしても理解できないのだ。

 たとえば、これまで日本政府はODA受注企業をほとんど明らかにしていない。「中国政府からの意向」(外務省援助課)だからだ。中国政府が情報を隠すのは、援助に関与する企業やゼネコンが例外なく時の最高指導者と関係があるからである。

 第1次円借款で建設された山東省の港湾整備を請け負ったのは鄧小平の長男が会長を務める会社だった。第3次円借款を使って行なわれた海南島の通信と港湾などの開発整備は趙紫陽の指定の企業が受注している。海南島はいまでは国内最大の海軍基地に成長している。

 これこそ援助に寄生する中国共産党幹部と家族の腐敗構造であり、中国国民に知られることを恐れる情報である。日本政府は血税者たる国民目線で受注企業を明らかにし、中国国民向けに中国語でも情報公開すべきである。これだけで中国は狼狽する。有力なけん制となるのである。

※SAPIO2010年11月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
イセ食品グループ創業者で元会長の伊勢彦信氏
《小室圭さんに私の裁判弁護を依頼します》眞子さんの“後見人”イセ食品元会長が告白、夫妻のアパートで食事した際に気になった「夫としての資質」
週刊ポスト
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
《ルフィ事件》「腕を切り落とせ」恐怖の制裁証言も…「藤田は今村のビジネスを全部奪おうとしていた」「小島は組織のナンバー2だった」指示役らの裁判での“攻防戦”
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ツアーに本格復帰しているものの…(左から小林夢果、川崎春花、阿部未悠/時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》川崎春花、小林夢果、阿部未悠のプロ3人にゴルフの成績で “明暗” 「禊を済ませた川崎が苦戦しているのに…」の声も
週刊ポスト
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン