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元上場企業役員(65)「職業欄に“無職”と書くのは何よりの屈辱」

 少子高齢化に伴って医療、年金、保険制度……高齢者を取り巻く“環境”は悪化している。それを何より敏感に感じ取っているのが当人たち。“ニッポンの大問題”を確かめるべく、高齢者100名余にアンケート取材を実施してみると嘆息、小言が出るわ出るわ。一人は、こう怒りをぶちまけた。必死に頑張って国をここまで豊かにしてきた世代を“逃げ切り世代”とは何事ぞ─―。

 * * *
 発端は読者から本誌編集部に寄せられたこんな声だった。

「企業戦士として戦い抜いてきた我々にとって今、職業欄に『無職』と書かなければならないのは何よりの屈辱なんです。病院でもそうだし、ちょっとした会員カードを作る時もそう。無職って何かこう、すごくネガティブな、社会のお荷物みたいな響きがある。他の呼び方ってないものか」(元上場企業役員・65)

 欧米の場合、引退世代は「retired(リタイアード)」と呼ばれ、尊敬の念を込めて社会に迎えられる。一方、日本では仕事をしていない人―まったく社会にコミットしようとしない人と同じ括りにされてしまうのだから、元役員氏の指摘はもっともである。

 高齢者が暮らしやすい社会を作るために、「老人党」を結成した精神科医なだいなだ氏(81)も、こう憤った。

「“老人”を一括りにする風潮が僕は気にくわないね。若者が『最近の若者は……』とまとめていわれると腹が立つのと同じ。僕たちの多様な意見が政治には届かない。だから、それを届けるべく老人党を結成した。ホント、この国は暮らしにくくてしょうがないよ」

 以下、取材で浮き彫りになった“老人哀史”の実態をお伝えしていこう。

●免許更新「3年」への疑念

 日本には高齢者差別が蔓延っている、となだいなだ氏は嘆く。例えば――。「“老人は危険”とばかりに、71歳以上の車の免許期間が5年から3年に、講習代も約6000円と高い。僕なんか無事故、無違反のゴールド免許で毎年1万キロ以上走ってきた。足腰の弱くなった老人こそ車は必要だろ」

●期限切れ免許証を捨てられない

 一方、高齢者は更新が切れた免許証を財布に入れ続けるといった現実もある。冒頭の元役員が語った。「名刺もないし、定年を迎えると身分を示すものが免許証しかないからね。親父が有効期限切れで更新できない免許証を大切に持っていたのを思い出したら、涙が出ましたよ」

●軽自動車への増税は老人イジメ

 利便性から高齢者に人気の軽自動車に対しても新制度導入の動きがある。都内在住の元会社員(71)はいう。「年金生活に入り、車の維持費が高いから軽自動車に乗り換えた。けど今度は“環境自動車税”構想とやらで軽の税負担が増えるときた。民主党は環境には優しいのに老人には、冷たいんだね」

※週刊ポスト2011年2月25日号

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