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ビンラディン殺害 米軍は“生存神話”回避のため地上戦選ぶ

 アメリカのオバマ大統領は、5月1日深夜(現地時間)、緊急のテレビ演説を行ない、2001年9月の米同時多発テロの首謀者で、国際テロ組織アル・カイーダの指導者、オサマ・ビンラディン容疑者をパキスタンの首都イスラマバード近郊のアボタバードで殺害したと発表した。

 演説によれば、アメリカは、昨年の8月にビンラディンの潜伏先を突き止め、4月末から身柄確保の作戦に乗り出し、5月1日、米軍特殊部隊が銃撃戦の末、ビンラディンを殺害、その遺体を確保した。

 居場所が特定できれば、過去にリビアやイラクで実施され、現在もリビアで展開されている作戦のように、米軍に被害が及ばない“安全”な空爆という手段も可能だったはずだが、なぜそうしなかったのか。

 中東情勢に詳しいジャーナリストの惠谷治氏はこう解説する。

「今回、あえて危険性の高い地上からの突入作戦を選んだのは、遺体を回収して、DNAを鑑定して、確実にビンラディンが死んだことを内外に示すためだったことは疑いありません。

 ただ、オバマ演説で、DNA鑑定の言及がなかったのは、その重大性に気付いていなかったのかもしれません。
 
 権力者が殺害されると、追従者によって “生存神話”が作られるものです。ビンラディンの遺体の写真を公表しても、現代のパソコン社会では写真の捏造は簡単です。

 しかし幸いに現代では、DNA鑑定によって死亡の事実を明確に示すことができます。大統領演説に続いて、米軍が早急にDNAによる鑑定書を公表しなければ、必ず“神話”が作られます。そうなれば、今以上にやっかいな情勢になります。

 空爆で対象人物を殺害したとしても、DNA鑑定で証明しなければ、殺害したとは認められないのが現代です。空爆であれば、瓦礫のなかから埋もれた遺体を探し出すという困難な作業になりますが、敵地での空爆であればその作業も不可能です。

 同様の理由で空爆できない例は他にもあります。米軍は金正日の居所を把握し、ピンポイント攻撃の能力がありながらも、金正日を空爆できないでいるのはその一例です」

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