国内

福島原発事故調査した大前研一 天災ではなく人災と結論づける

福島第一原発はなぜ未曾有の大事故に至ったのか、その原因は徹底的に究明されなければならないが、政府・保安院の調査だけでは到底十分とはいえない。そこで元原子炉設計者でもある大前研一氏が、専門家らの協力のもと独自調査し、「福島第一原発事故から何を学ぶか」という中間報告をネットで公表した(報告書の内容はBBT〈ビジネス・ブレイク・スルー〉のサイト〈http://pr.bbt757.com/2011/1028.html〉やYouTubeで全面公開している)。報告書のポイントを大前研一氏が解説する。

* * *
調査をした結果わかったことは、政府が説明していること、今やろうとしていることには真実のかけらもない、ということだ。

たとえば福島第一原発1号機は、東日本大震災が発生した3月11日の午後6時46分頃、すでにメルトダウン(炉心溶融)が始まり、翌12日の午後3時36分に水素爆発が起きている。水素爆発はメルトダウンしないと起きるわけがないのだが、政府がメルトダウンを認めたのは、それから2か月後のことである。

原子力安全・保安院が実施しているコンピュータ・シミュレーションによるストレステスト(耐性検査)も、電力会社に指示している安全対策も完全にポイントがずれている。なぜなら、そもそも政府は福島第一原発の事故原因を間違えているからだ。政府がIAEAに提出した報告書は、今回の事故原因について「津波の発生頻度や高さの想定が不十分であり、大規模な津波の襲来に対する対応が十分なされていなかったためにもたらされた」としている。つまり、想定外の大津波が来たから起きた、と言っているのだ。

しかし、事故を起こした福島第一原発1~4号機と同じ大津波に襲われながら、福島第一原発5、6号機、福島第二原発、女川原発、東海第二原発は事故にならなかった。ということは、大津波は事故のきっかけにすぎず、メルトダウンに至った直接の原因は他にあることになる。

そこで我々は、福島第一原発1~4号機と他の原子炉ではどのような違いがあったのかという視点から調査・分析を行なった。すると両者の間には、全電源を喪失したか否かすなわち原子炉に冷却用の水を送り込むポンプを動かすための非常用発電機が1台でも生き残ったか否かの違いしかなかったのである。

たとえば福島第一原発5・6号機の場合、1~4号機と同様に地震で変電所が壊れて外部交流電源を喪失したが、幸運にも6号機の非常用ディーゼル発電機が1台だけ動いたおかげで5号機にも電力を融通して冷却を行ない、2機とも冷温停止まで持っていくことができた。

その発電機だけが生き残った理由は「空冷式」で、しかも水没しない高所に置いてあったからだ。設計当初はなかったものだが、数年前に保安院から非常用発電機の増設を命じられ、たまたま水冷式よりコストが安い空冷式を選択した。空冷式は冷却水を取り入れる必要がないから高所に置いた。そんな偶然が重なって5、6号機が命拾いをしたのである。

一方、1~4号機は非常用ディーゼル発電機がすべてタービン建屋の地下1階に設置されていたため水没し、冷却用の海水を汲み上げるポンプも常用電源のポンプと同じく海側に並んでいたため津波によって壊滅した。外部電源を取り込むための電源盤も水没し、電源車を接続することができなかった。

直流電源(バッテリー)も1、2、4号機は地下にあったので水没した。3号機はたまたまスペースがなくて中2階に置いてあったことが幸いして生き残ったが、充電を取り込む所が水没したため8時間しかもたなかった。

ちなみに、福島第二原発と女川原発は外部交流電源が1回線のみ健全で、東海第二原発は外部交流電源をすべて喪失したものの非常用ディーゼル発電機が健全だったため、いずれも“首の皮1枚”で事故を免れた。

ということは、非常用電源の冷却用ポンプが常用電源の冷却ポンプの隣に並んでいる「設計思想」そのものがおかしいのではないか、という疑問が出てきた。“たまたま設計時になかった設備”が、生き残った原子炉ではカギとなっていたからだ。そこで原子力安全委員会の「設計指針」を読み直してみたら、なんと、こんなことが書いてあった。

「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧または非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」
「非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成または運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分に高い場合においては、設計上、全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい」

私は、開いた口がふさがらなかった。これが、実は直接の事故原因だったのである。つまり、交流電源が全部喪失する事態は想定しなくてよいと設計指針に書いてあるから、東電も日立も東芝も、そのとおりに原発を造ったのだ。

ところが今回は、すべての交流電源が長期間にわたって喪失した。このためECCS(緊急炉心冷却装置)やホウ酸水注入系など原子炉で想定される最悪事故に備えた安全装置が1つも機能しなかった。だから原子炉や使用済み燃料プールを冷却することができなくなってメルトダウンと水素爆発が起き、放射性物質が飛び散ってしまったのである。

つまり、福島第一原発事故は大地震・大津波による「天災」ではなく、誤った設計思想による「人災」だったのだ。なぜ原子力安全委員会がこんなバカげた文章を入れたのかわからないが、その担当者を明確にして、きちんと責任を取ってもらわねばならない。

※SAPIO2011年12月7日号

トピックス

高橋藍の帰国を待ち侘びた人は多い(左は共同通信、右は河北のインスタグラムより)
《イタリアから帰ってこなければ…》高橋藍の“帰国直後”にセクシー女優・河北彩伽が予告していた「バレープレイ動画」、uka.との「本命交際」報道も
NEWSポストセブン
歓喜の美酒に酔った真美子さんと大谷
《帰りは妻の運転で》大谷翔平、歴史に名を刻んだリーグ優勝の夜 夫人会メンバーがVIPルームでシャンパングラスを傾ける中、真美子さんは「運転があるので」と飲まず 
女性セブン
安達祐実と絶縁騒動が報じられた母・有里氏(Instagramより)
「大人になってからは…」新パートナーと半同棲の安達祐実、“和解と断絶”を繰り返す母・有里さんの心境は
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《小島瑠璃子が活動再開を発表》休業していた2年間で埋まった“ポストこじるり”ポジション “再無双”を阻む手強いライバルたちとの過酷な椅子取りゲームへ
週刊ポスト
安達祐実と元夫でカメラマンの桑島智輝氏
《ばっちりメイクで元夫のカメラマンと…》安達祐実が新恋人とのデート前日に訪れた「2人きりのランチ」“ビジュ爆デニムコーデ”の親密距離感
NEWSポストセブン
イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《安達祐実の新恋人》「半同棲カレ」はNHKの敏腕プロデューサー「ノリに乗ってる茶髪クリエイターの一人」関係者が明かした“出会いのきっかけ”
NEWSポストセブン
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《“奇跡の40代”安達祐実に半同棲の新パートナー》離婚から2年、長男と暮らす自宅から愛車でカレを勤務先に送迎…「手をフリフリ」の熱愛生活
NEWSポストセブン
「ガールズメッセ2025」の式典に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月19日、撮影/JMPA)
《“クッキリ”ドレスの次は…》佳子さま、ボディラインを強調しないワンピも切り替えでスタイルアップ&フェミニンな印象に
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)
《GPS持たせ3か月で400人と売春強要》「店ナンバーワンのモテ店員だった」美人マネージャー・田野和彩容疑者と鬼畜店長・鈴木麻央耶容疑者の正体
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン