ライフ

ケータイだけでなく日本人の性もガラパゴス化と女性作家指摘

「日本人の性はガラパゴス化」と北原さん

「世界でもっとも風俗が発達した国」「しかしそれでもセックスが弱いのはなぜ?」……我が国のセックス事情は世界中から様々な好奇な目線にさらされている。文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのり氏は、「日本のセックスはガラパゴス化してしまった」と指摘する。今日から三回連続でお届けする。

* * *

1997年にバイブ屋を始めました。もう14年になります。

この業界に入った時は、ヤクザに絡まれたらどうしよう…と恐る恐る仕事していましたが、面白いくらいコワイ人たちには出会わなかった。もっと効率と割のいい仕事がヤクザにはあるんでしょう。代わりにバイブ業界で私が出会ったのは、家族経営の小さな問屋さんやメーカー。バイブで女を喜ばせたいと願うオジサンたちが地道にバイブを作っている姿でした。

考えてみれば、世界屈指のモーターの国ですもの。モーターの微妙な振動にコダワリを見せるオジサンたちは常に真剣でした。ブーブブブブッブー、ブブブ・ブブブ・ブブブッブー時にはバッハのような優雅さで、時には三三七拍子のような勢いで、新バイブを作り続けるオジサンたち。

はっきり言って、女はそんなのどうでもいいんですけどね。バイブなんか動けばいい。それより、ペニスなのかご神木なのか分からない、不気味な棒から生えてる民族衣装を着たジジイと、ジジイに寄り添い震える熊とか、そんなデザイン止めてくれよっ! というのがユーザーとしての女の本音というもの。

そう。オジサンたちの作るバイブは、気持ち悪すぎた。グロテスク過ぎた。意味が分からなすぎた。それでも、日本のバイブは、膣に入れる棒(爺が生えているご神木部分)とクリトリスを刺激する部分(熊)という画期的な二股構造を世界に先駆けて作ったため、「車といえば日本、バイブといえば日本!」と、世界的に定評があったのです。少なくとも私がバイブ屋を始めた15年前は。

ところが、2000年代に入ってから、ジャパニーズバイブの地位が、むちゃくちゃな勢いで下がり始めます。というより、世界でバイブの地位が上がりはじめた、という方が正しいかもしれない。バイブ=エログロ、ではなく、女性がセックスを主体的に楽しむ道具として、またはカップルがよりセックスを刺激的に楽しむためのトーイとして。ヨーロッパでは高級デパートや下着屋さん、コスメショップなどでバイブが売られはじめました。

またEU独自のCE規格(JIS規格みたいなもの)のないバイブは、EUでは売れなくなりました。家電並のデザインと家電並の使いやすさと安全性を目指したヨーロッパのバイブが、バイブの基準を変えたのです。

さて。そんな2000年代、日本のオヤジは何をしていたか、というと。オヤジながらにシャレ心を効かそうとはしていたわけです。ヨーロッパが高デザインで安心素材のバイブをつくれば、日本のオヤジは七色に光りながらうねる竜とか、敢えてドドメ色したぶっといチンコのグロテスクさとか、そんな独自路線での勝負をはかります。

バイブだけじゃない。老女の匂いがするローションとか、○○団地で盗まれた下着シリーズ(もちろん本当の盗品ではなく、メーカーの社員が新品のパンツにコーヒーのシミなど付けて制作する)とか、何十メートル先でもバイブする遠隔操作とかとか。

そして…気がつけば…日本のバイブは世界でまるで売れなくなっていました。あんなに一生懸命つくっていたのに! こんなにもエロが好きで、バイブを大切に考えていたのにっ! はっきり言って、ヨーロッパで日本のバイブなんて売ってない。「ジャパニーズバイブ」=「性能がいい」なんて時代、もうとっくに昔の話になってしまってる。

そう。ガラパコスはケータイだけの話じゃありませんでした。バイブの世界でも同じ。そして多分、もしかしたら、セックスの世界でも、私たちはガラパコス化してるかもしれない。

私たちのセックスは、もう世界で通用しない。それは、なぜ? そんなことを数回にわたって考えてみたいと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン