ライフ

不機嫌な記者会見の芥川賞受賞作家 ウニのように味わい深い

食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏がニュースや著名人などに縁のある料理を紹介する「日本全国縁食の旅」。今回は異例の芥川賞受賞記者会見で注目を集めた作家・田中慎弥氏の、地元・下関の意外な名物について語ります。

* * *
第146回芥川・直木賞が発表された。今回、話題をさらったのは、『共喰い』で芥川賞を受賞した、山口県下関市在住の田中慎弥氏。実際の機嫌がどうだったかはさておき、「私がもらって当然」「もらっといてやる」「5回目(のノミネートでの受賞)とは間抜けです」などの「不機嫌」と思われるようなトガった言動に、会見の模様を配信したネットの動画サイトのアクセスはウナギ上りとなった。

受賞作『共喰い』にも登場人物がウナギを食べる場面が登場するが、下関にまつわる食材と言えばやはり「フグ」。そして下関には、実は「下関四大名物」と言われる食材がある。フグに加えて「クジラ」「アンコウ」「ウニ」という4種の魚介類がそれだ。

フグは説明の必要すらないだろう。下関は全国の水揚げ高の約8割を占める、フグの一大集積地だ。南風泊(はえどまり)市場は、日本最大のフグ取り扱い市場として知られている。

またクジラだが、もともと下関は近代捕鯨の発祥地であり、戦前から高度成長期にかけては捕鯨を漁業の中心に据えていた、現在のマルハニチロの創業の地でもある。さらに下関漁港はアンコウの国内水揚げもNo.1。

だがウニだけは少し様相が異なる。年間国内漁獲量約1万トンのうち山口県での水揚げは例年200~300トン程度で全国7~8位といったところ。漁獲量では1位の北海道の10分の1以下なのに、なぜ「四大名物」か。実は同じウニでも「瓶詰めウニ」が四大名産に数えられている。

実は、瓶詰めウニの発祥の地は、下関港から直線で10kmほどのところにある六連島(むつれじま)と言われている。明治の初期、島の寺の住職とイギリス人の水先案内人との歓談中、誤ってウニの小鉢にジンをこぼしてしまったことから、アルコール漬けの瓶詰めウニが生まれたのだとか。

もともと山口県には江戸時代から藩主献上用の塩漬けウニや焼酎漬けなど、脈々としたウニの歴史がある。だからこそ、瓶詰めウニが「下関四大名産」に昇華したのだ。

生ウニとはひと味違う芳醇な香りもする、瓶詰めウニ。とげとげしい素材の外面とは裏腹に、熟成された味わいはとても深い。ノミネート5回目にして受賞者の栄誉を勝ち取った、田中慎弥氏の会見で、なぜか瓶詰めウニのことを思いだしていた。

ちなみに会見中の田中氏は、仏頂面をほとんど崩さず攻撃的な言動に徹した。にも関わらず、会見場は笑いに包まれていた。その様子もまたとても味わい深かった。


トピックス

《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《約200枚の写真が一斉に》米・エプスタイン事件、未成年少女ら人身売買の“現場資料”を下院監視委員会が公開 「顧客リスト」開示に向けて前進か
NEWSポストセブン