アメリカのトランプ大統領と、ベネズエラのマドゥロ大統領(AFP=時事)
アメリカのトランプ大統領による、南米・ベネズエラへの攻撃とマドゥロ大統領夫妻の拘束、国外移送──ベネズエラ情勢は重大な局面を迎えた。日本ではこれまであまりベネズエラに関する報道はされてこなかったが、ベネズエラの後ろ盾は、同国産の石油を大量に輸入している中国やロシアだ。そこへ介入するということは、米中露という大国同士の衝突につながりかねない
リスクを冒してでも、トランプ氏が“マドゥロ排除”という手段に打って出た背景とは何なのか。在米ジャーナリストの高濱賛氏が解説する。
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「次に危ないのはベネズエラだ」──ワシントンの外交筋が、冗談とも本気ともつかぬ口調でそう漏らすようになって久しい。ドナルド・トランプ氏が再び政権の座につき、米国外交はどこへ向かうのか。もはやこの問いは理念論ではない。
ベネズエラは長年、経済崩壊、選挙の正統性を欠くニコラス・マドゥロ政権、麻薬取引と武装組織の温床、さらにはロシア、中国、イランの影響下にある国家として、米国から警戒の対象とされてきた。
トランプ氏は1月3日、ベネズエラへの攻撃について記者会見を開き、「これは米国の歴史上、最も衝撃的で効果的、強力な国力と能力を誇示するものだ」「安全で適切、かつ賢明な政権移行が完了するまで、われわれが国を運営する」と語った。拘束されたマドゥロ大統領はアメリカへ連行され、麻薬取引に関する罪で裁判にかけられると見られている。
この会見の中でトランプ氏は、ベネズエラに対する追加の軍事行動を示唆する発言もした。また、同国の政治体制への関与や石油産業への介入、地上部隊の派遣をちらつかせるなど、従来の制裁外交の枠を超えた強硬姿勢を鮮明にした。
米政府関係者の一人は、こう語る。
「ワシントンでは長年、“手を出すかどうか”ではなく、“いつ手を出すか”の問題だと考えられてきた。是非ではなく、タイミングの問題だった」
第一次トランプ政権期、ベネズエラへの軍事介入案が国家安全保障会議(NSC)で検討されていたことは、複数の回顧録や証言によって裏付けられている。当時は国防・外交当局が歯止め役となったが、第二次政権で同様の抑制が機能する保証はない。政権中枢には、トランプ氏への忠誠を最優先する人物が集められていると見られるからだ。
