国内

福島県知事の18歳以下医療費無料要求に「筋が違う」の指摘

「地方の主権」などとよく言われるものの、地方は中央に補助金の要請をすることも多い。そんな状況に対し、経営コンサルタントの大前研一氏が一喝。以下は、大前氏の主張である。

 * * *
 そもそも日本の財政政策は田中角栄以降、それまでの歳入・歳出均衡型から歳出優先型へ大きく舵を切った。まず公共事業ありきで、歳入は後からついてくる、という発想が当たり前になった。それが成長期には地方を豊かにして、いわゆる「国土の均衡ある発展」を推し進めたという面もあるが、結果的に地方と国の関係が非常に歪み、地方が国に予算をねだるようになって、地方の自立機能が失われた。

 かくして日本中の地方自治体が、国家破綻を加速させる「要求団体」と化してしまったのである。

 その象徴が、東京電力福島第一原子力発電所事故を理由に「18歳以下の医療費無料化」を野田佳彦首相に求めた福島県の佐藤雄平知事だろう。日本は国の借金が1000兆円に達してデフォルト(債務不履行)の秒読み段階に入っているというのに、自治体にはその危機感が全くないどころか、それを早めるようなことを平気で要求しようというのである。

 福島をはじめ被災地の復興支援を進めることが、政府の最優先課題であることは言うまでもない。しかし、だからといって、福島に住む子供たち全員の医療費を無料にしろというのは、明らかに筋が違う。

 今、日本の地方が膠着(こうちゃく)、閉塞、停滞している原因の多くは、こうした地方の依存体質にある。いくら地方分権だの地域主権だのと叫んでも、「経済的な自立なき自治はない」ということを、地方は肝に銘じるべきである。地方自治体は、いつ折れてもおかしくないほど細くなった国の脛(すね)をかじるのではなく、「自分の財源は自分で賄(まかな)う」という発想とシステムに転換しなければならないのだ。

※SAPIO2012年2月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
雅子さまは免許証の更新を続けられてきたという(5月、栃木県。写真/JMPA)
【天皇ご一家のご静養】雅子さま、30年以上前の外務省時代に購入された愛車「カローラII」に天皇陛下と愛子さまを乗せてドライブ 普段は皇居内で管理
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
東京駅17番ホームで「Zポーズ」で出発を宣言する“百田車掌”。隣のホームには、「目撃すると幸運が訪れる」という「ドクターイエロー」が停車。1か月に3回だけしか走行しないため、貴重な偶然に百田も大興奮!
「エビ反りジャンプをしてきてよかった」ももクロ・百田夏菜子、東海道新幹線の貸切車両『かっぱえびせん号』特別車掌に任命される
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン