国際情報

中国に新潟の土地売った中国大使に日本人の矜持ないと櫻井氏

 国家の基本は、国民と国土である。しかし、最近、新潟での広大な土地取得契約をはじめ、日本各地で中国による土地の買収が以前にもまして急激に進んでいる。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、こうした現状を「危機的状況」と警告する。巨大な“カネの力”に、どう対抗すべきか。

 * * *
 中国による日本の国土への脅威は「尖閣」だけにとどまらず、列島のあちこちを侵食しています。

 最近では、新潟市と名古屋市で、中国総領事館の用地取得の動きが進んでいます。なぜ新潟と名古屋なのか? 

 中国の動きには当然、理由があります。日本国内にある中国大使館・総領事館は7か所ですが、すでに東京・大阪・福岡・札幌・長崎の5か所は中国政府に土地を所有されてしまっています。残る2か所が、新潟と名古屋なのです。現在この2か所は、賃貸で総領事館が運営されています。

 新潟市では今年3月、県庁そばの民有地約1万5000平方メートルが中国総領事館側と売買契約されていたことが明らかになりました。問題の土地では、すでに契約は済んでいますが、3月上旬時点では登記はなされていないと聞きます。日本における土地の所有権は他国に比べて非常に強く、いったん中国の手に渡れば、この広大な土地が治外法権と化してしまう可能性が高いのです。

 そもそも、総領事館に1万5000平方メートルという広大な土地が必要とは考えられません。ここからは、単純に「現在は賃貸だが所有したい」というだけにはとどまらない中国の戦略的な意図が見えてきます。

 新潟は、地政学的に非常に重要な位置にあります。

 中国は2005年に北朝鮮の羅津港の第1埠頭を租借し、金正恩体制になってからは100万tの米の見返りに羅津港の第4、第5、第6埠頭の建設権を得て租借しました。羅津から進路を東に取れば津軽海峡で、すでに中国にとって太平洋への重要な出口になっています。

 そして羅津から潮の流れに乗って南下すれば、佐渡島、さらにその先の新潟にぶつかります。中国が佐渡島と新潟に拠点を作ることができれば、日本海は中国の“内海”化する危険性があります。中国側から見れば、だからこそ拠点となる新潟市に広大な土地を求めていると言えます。まさに日本の安全保障に関わる問題なのです。

 そもそも、このような事態を招いたのは、北京にいる丹羽宇一郎大使らの気概なき外交です。

 昨年7月、日本政府は北京に新しい日本大使館を完成させましたが、中国政府は申請のなかった吹き抜けが建築されているとして使用を認めませんでした。そのうえで新潟と名古屋の土地の買い取りについて、日本政府に便宜をはかるよう要求してきたのです。

 この筋違いの要求に、丹羽氏らはうろたえたのでしょう。そして本省に泣きついたのではないでしょうか。玄葉光一郎外相、野田首相の了承を経て、「中国側の要請に関連国際法に従って協力する」との口上書を中国側に提出しました。この前代未聞の屈辱的な対応の結果、その2日後には日本大使館の使用許可が下りました。

 明らかにバーターによる妥協であり、丹羽氏と日本政府はまんまと中国の罠にはまったのです。丹羽氏は伊藤忠商事の元会長で、商社マンとしては有能だったのかもしれませんが、一体、氏には日本人としての矜持があるのでしょうか。こんな人物を大使に任命した民主党政権の責任は極めて重いと言えます。

※SAPIO2012年4月25日号

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン