国内

「維新政治塾のほとんどが不適格」と小泉元首相の秘書官語る

 大阪維新の会を率いる橋下徹・大阪市長の勢いが止まらない。維新政治塾に集まった3000人と小泉チルドレンとの共通点を指摘する者もいる。だが、小泉氏の総理首席秘書官を務めた飯島勲氏は、両者は大きく異なると言う。ジャーナリストの須田慎一郎氏が聞いた。

 * * *
須田:橋下市長の問題点を発見してすぐに行動する政治が有権者から大きな支持を受けている。

飯島:確かに、これまでの府知事、市長時代を通じての橋下氏の実績には一定の評価をしていいだろう。しかし、それらはいずれもマイナス部分の是正だ。言ってみれば、「叩くこと」への評価だ。繰り返しになるが、より重要な大阪経済をどうするのかという問題には着手していない。

 小泉元総理は小さな政府を目指したが、それだけでは日本経済は沈没してしまう。明日のことをどうするのか、それを語らなくてはいけない。

須田:「維新の会」を中心として、国政への進出に意欲を見せていることについてはどう評価するか。

飯島:大阪市は生活保護受給者が全国でダントツのワースト1、経常収支も政令指定都市の中でかなり悪い方だ。大阪府も失業率が長く全国ワースト3だ。橋下市長も松井一郎・府知事も、やるべき仕事が山積している。橋下市長が大阪市長選で掲げた府と市の「二重行政の廃止」もまだまだこれからだ。これらに真剣に取り組むならば国政進出は不可能だ。まずは大阪市、大阪府でやるべきことをやってからだろう。

 仮に国政に打って出るのであれば、外交、安全保障、経済の3本柱について、何をするのか、どうしたいのか表明があってしかるべきだが、それも今までのところ具体的な言及はない。「橋下」の看板を使って実績と経験のない人を国会議員にするなどもってのほかだ。

須田:維新の会は全国で300人を擁立すると言われている。彼らと、郵政選挙で大量に誕生した小泉チルドレンとの類似点を指摘する声もある。

飯島:小泉郵政解散の時とは決定的な違いがある。当時、小泉総理は、政府の財政投融資に大変な無駄があるという問題意識から自民党総裁選で郵政民営化を掲げて総裁に就任した。ところが、いざ郵政民営化に着手すると、それに反対する議員が自民党内から続々と出てきた。これではおかしな話になる。だから国民の信を問うために衆議院を解散して、すべての選挙区で「民営化賛成」の議員を擁立する必要があった。

 そして、誰を擁立するかについては、オールジャパンでどこでも通用する人材をピックアップした。だが、橋下市長の集めたのは素人以下だ。

 本来、国会議員とは有権者の声に真摯に耳を傾け、地道な積み重ねで当選するものだ。自分の名前では当選できない人間が「橋下人気」だけで国会議員になろうとしている。

 橋下市長は「実務」を知っているかどうかを非常に重視しているようだが、その意味でも、維新政治塾に集まった3000人のうちのほとんどが不適格だろう。

※SAPIO2012年6月27日号

関連キーワード

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン