国際情報

尖閣「2022年問題」日本領に確定すれば習近平氏は非難の嵐に

 一時、公の場から姿を消して様々な憶測が飛び交った習近平氏。次期中国国家主席就任が確実視されている習氏は、尖閣諸島との関係が深い。尖閣と地理的に近い福建省で17年過ごした氏の尖閣をめぐる対応を、ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。

 * * *
 福建省では、地理的に近い尖閣の領有問題に敏感だ。習近平の尖閣諸島をめぐる反日ぶりを示すエピソードがある。

 ウィリー・ラム国際教養大学教授によると、中国の外交政策を決定する最高機関「中国共産党外事工作指導小組(グループ)」が4月中旬、北京で開かれ、正規メンバーではない中央軍事委員会副主席を兼務する習近平ら3人の軍事委副主席が押しかけるように出席。石原慎太郎・東京都知事による尖閣諸島の買収計画について「計画が現実のものとなれば、解放軍は戦闘機を飛ばし、軍艦を派遣して、それらの島々を実効支配すべきだ。われわれは相手に軍事的教訓を与える用意がある」と強調したという。

 筆者はこの6月、尖閣諸島に近い福建省廈門や福州を訪問したが、福建省の気象台が6月から尖閣諸島周辺海域の天気予報を開始。天気のほか、風向きや風力、波の高さなどの1週間予報を毎日18回ラジオで放送し、省政府のホームページや一部の新聞にもそれらが掲載されていた。

 党機関紙「人民日報」によると、中国政府は尖閣諸島や南シナ海の係争海域周辺を人工衛星や航空機などで遠隔監視する高性能の「海域動態監視観測管理システム」の範囲内に組み込んだという。まさに軍主導で「尖閣諸島は中国領」との既成事実作りを始めたといえよう。

 この背景には、「実効支配が50年続くと国際法の判例で尖閣が日本の領土として定着しかねない」との中国指導部の強い危機感がある。1972年5月の沖縄復帰により、尖閣諸島が米国から返還されて50年後といえば2022年5月だ。そのため中国ではその期限を「2022年問題」と呼んで警戒している。

「『2022年問題』があるからこそ習近平が敏感に反応している。なぜなら彼は2022年には、まだ最高指導者の座にあるからだ」と同筋は指摘する。仮に、2022年に尖閣諸島が日本領と確定されれば、習近平が非難の嵐に巻き込まれる可能性が高い。ちょうど今の胡錦濤同様、権力を「第6世代」に譲る直前のタイミングになるはずだから、そこで「弱腰の指導者」の誹りを受ければ後継政権への影響力を失う。

 7月下旬から党大会の最高人事を協議する河北省の避暑地・北戴河で行なわれた会議でも、習近平は「釣魚台(尖閣諸島の中国名)問題で、日本に毅然とした態度を示す必要がある。日中関係に多少波風が立つのは仕方ない」と強硬論を唱え、反日運動の激化を懸念する胡主席ら穏健派と対立したという。

※SAPIO2012年10月3・10日号

関連記事

トピックス

二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン