国内

「日本維新の会」人気低迷した2つの理由を大前研一氏が解説

 次期衆院選に向けて動きを加速させている橋下徹氏。だが、朝日新聞が10月22日に報じた世論調査では、民主11%、自民26%、維新2%。NNN(日本テレビ系)が同21日に報じた世論調査でも民主14%、自民29.3%、維新2.3%だった。国民の期待がしぼみつつある理由について、大前研一氏が解説する。

 * * *
 橋下人気は数か月前にピークを迎えたわけだが、なぜ翳りが出てきたのかというと、主な理由はやはり2つあると思う。

 1つは先の自民党総裁選挙にドラマがあったことだ。今までの自民党は、長老や派閥の領袖らが後継総裁を談合や密室で決めるケースが少なくなかった。

 ところが今回は、“谷垣降ろし”で「平成の明智光秀」と呼ばれ、長老グループが支援した石原伸晃前幹事長が決選投票にも進めなかった。同じ清和政策研究会(町村派)から町村信孝氏と安倍晋三氏という2人の候補が立ったことで、派閥も事実上解体した。

 そして終わってみると、安倍氏が勝って総裁になり、党員・党友票トップの石破茂氏が幹事長に就任した。メディアは事前に「石原と石破の一騎打ちになる」と報じていたから、国民からすればサプライズの連続で、非常に面白いドラマだった。この総裁選のインパクトによって、私が見る限り、今は「(新生)自民党政権に戻そう」というムードになっている。冒頭の世論調査結果も、その空気を反映したものだろう。

 もう1つの理由は、ちょうど同じ時期に日本維新の会が“自爆”したことだ。橋下人気にあやかろうと自民党や民主党、みんなの党から流れてきた9人の現職国会議員を維新入りさせ、しかも彼らがまとまりに欠ける発言を繰り返したために、国民が「頭数を揃えるためには誰でもいいのか」と白けてしまった。

 深刻なのは、「自爆」の根本的な原因が、もっと深いところにあることだ。

 維新は全国300小選挙区すべてに候補者を擁立し、大阪の地方政党から全国政党になると宣言した。しかし、橋下氏は「地方政党と全国政党の違いは何か」「地方政党が全国政党になるためには人材や政策、そして組織の構築も含めてどういう手順を踏まなければならないか」という点について、はっきりした見解を持ち得ていないように思う。

 政党支持率が上昇して党名を変えたら全国政党になれるわけではなく、それは必要条件にすぎない。十分条件は、全国政党たり得る人材がいるのか、国家と地域に貢献できる政策があるのか、ということだろう。

 全国政党になるためには少なくとも20人くらいの大臣候補者が必要になる。そのほか副大臣や政務官などを含めると、100人ほどの人材がいなければならない。ところが、維新にはそういう人材は見当たらないというのが国民の率直な感覚だろう。

 先の9人の国会議員に加え、次期衆院選で候補者になると目される顔ぶれと言えば、東国原英夫・前宮崎県知事(出馬しないと公言しているが)、中田宏・前横浜市長、山田宏・前杉並区長ら“失業中”の元政治家・首長。あとは維新の会に所属している地方議員や、維新政治塾で促成栽培している“橋下ベイビーズ”である。

 彼らは数を揃えることにはつながるかもしれないが、国が進むべき方向を決めるリーダーシップや政策を持っているかとなると、甚だ怪しい。

 有望な人材が少ないことについて、橋下氏は「それでいいんです。政治は最後は数です」と述べている。しかし、それでは国民の支持は得られないと思う。

 また、全国政党となれば外交・安保と経済が中核的なテーマだが、橋下氏と維新の会には外交の経験がないし、国家的なビジョンに立った経済政策も打ち出せていない。有能な人材を揃え、国民の納得が得られる政策を練り上げるというステップを踏まずに全国政党になろうとしたから、有権者の失望を招いて失速してしまったのである。

※SAPIO2012年12月号

関連記事

トピックス

史上初の女性総理大臣に就任する高市早苗氏(撮影/JMPA)
高市総裁取材前「支持率下げてやる」発言騒動 報道現場からは「背筋がゾッとした」「ネット配信中だと周囲に配慮できなかったのか」日テレ対応への不満も
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
「父と母はとても仲が良かったんです」と話す祐子さん。写真は元気な頃の両親
《母親がマルチ商法に3000万》娘が借金525万円を立て替えても解けなかった“洗脳”の恐ろしさ、母は「アンタはバカだ、早死にするよ」と言い放った
NEWSポストセブン
来日中国人のなかには「違法買春」に興じる動きも(イメージ)
《中国人観光客による“違法買春”の実態》民泊で派遣型サービスを受ける事例多数 中国人専用店在籍女性は「チップの気前が良い。これからも続けたい」
週刊ポスト
競泳コメンテーターとして活躍する岩崎恭子
《五輪の競泳中継から消えた元金メダリスト》岩崎恭子“金髪カツラ”不倫報道でNHKでの仕事が激減も見えてきた「復活の兆し」
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」
米・フロリダ州で元看護師の女による血の繋がっていない息子に対する性的虐待事件が起きた(Facebookより)
「15歳の連れ子」を誘惑して性交した米国の元看護師の女の犯行 「ホラー映画を見ながら大麻成分を吸引して…」夫が帰宅時に見た最悪の光景とは《フルメイク&黒タートルで出廷》
NEWSポストセブン