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就活うつ ならないための方法となった人への接し方を医師解説

 夏休みに入っても内定がもらえず、就職活動を続けている学生も少なくないだろうが、そんなときに注意が必要なのが“就活うつ”だ。就職活動がうまくいかないことで精神的に強い負担を感じ、抑うつ状態に陥ってしまう。憂鬱、やる気が出ない、食欲不振、頭痛、心身のだるさなどの症状があり、軽く見ているとそのままうつ病になってしまうことも。近年増える若年層の精神科受診の中でも、就職活動が原因だと訴えるケースは倍増傾向だという。そこで、“就活うつ”について、心療内科をわかりやすく解説する人気漫画『マンガで分かる心療内科』の原作者で、精神科医のゆうメンタルクリニックのゆうきゆう院長に聞いた。

――学生が“就活うつ”になる原因には、何か傾向がありますか?

ゆうき:「ある程度有名な企業に入りたい」「そこそこのところでなければ入る意味がない」といった、企業の名前や条件にこだわることからうつ状態になってしまうケースも見られます。将来的な不安から雇用形態や企業の名前にこだわる気持ちもわかるのですが、先は長いですから、スタート地点にこだわりすぎないように心がけてほしいですね。

 また、周囲が異変に気づいても相手に気を使って声をかけられなかったり、本人が自分の状況について誰にも話せない、話してもわかってもらえないと感じてがふさぎ込んでしまうことも多いため、落ち込みに至る前段階で抑うつ状態を見極めるなど、その対応が難しいとされています。

――なぜ就活うつになってしまうのでしょうか?

ゆうき:なかなか内定がもらえないことで、自分が否定されたような気持ちになることが原因のひとつとして考えられています。周囲が就職を決めていく中で取り残されたような気持ちになることも焦りや自信喪失につながりますし、親や周りからの何気ない言葉で強いプレッシャーを感じているケースも多いでしょう。気持ちが沈んでいるときには周囲の反応もネガティブに捉えやすく、自分を追い込んでしまうことが少なくありません。とくにもともと家族やそれ以外の人間関係で「こう思われているのでは」といった思い込み、思考パターンに囚われやすいかたは、「就活がうまくいかいない自分」に対しての周囲からの評価を極端に気にしやすく、抑うつ状態にまで発展しやすい傾向にあります。

――どんな症状が出たらうつと判断したらいいですか?

ゆうき:寝付きが悪くなる、よく眠れないといった不眠症状、逆に寝過ぎてしまう過眠症状、急に悲しくなったり悲しくないのに泣き出すなど気分のムラがある、食欲が落ちる、または過食になるといった症状が出ている場合は、心療内科などに早めの受診がおすすめです。また、将来について考えると不安でたまらなくなるといった心理的な不安が強い場合にも、早めに専門機関に相談しましょう。感情の起伏が激しくなるのと対照的に、好きだったものに興味が持てなくなる、お笑いが好きで見ていたのにちっとも面白いと思わなくなったなど、感情が感じられにくくなるというのもうつ症状のひとつです。

――就活うつになりやすいのは、どんなタイプの人ですか?

ゆうき:基本的に頑張りやさんが多いですね。まじめで「こうしなければ」といった気持ちが強い人に多いです。また、少しプライドが高かったり、世間の目や評価を気にしすぎてしまう傾向が見られる人にも少なくありません。就職試験に落ちることで自尊心が傷つき、採用されなかった自分を認められないと大きなストレスになります。

――就活うつにならないようにするためには?

ゆうき:就職が決まらず焦る気持ちはわかりますが、できるだけリフレッシュする時間をとりましょう。また、心配なこと、不安に思っていることを話せる場を持つか、話せる相手を作っておくといいでしょう。

 他に、周囲からの反応を気にして自分を追い詰めていないか、自分を追い詰めるような考え方をしていないかをチェックすることもおすすめですね。もしかしたら親だったり誰かの期待に応えるために就職をしようとしていたり、体面を取り繕うために就職しようとしたりしているのかもしれません。決してそれ自体が悪いわけではないのですが、理想と比較して就職がうまくいかない自分を「ダメな自分」と結論づけてしまうことも多いため、「自分が自分を追い詰めている思考の癖」を見極めることも役に立つでしょう。

――なってしまったときの対処法は?

ゆうき:「自分でなんとかしよう」としないことです。そういった意識が強い人ほど、自分を追い込みやすいからです。軽度のうつ症状であれば気分転換や生活習慣の見直し、定期的なストレス発散や誰かに話を聞いてもらうことで症状が治まることがありますが、その見極めはおそらく自分自身ではできないのではないでしょうか。ですので、基本的な生活習慣の見直しと気分転換で症状があまり改善しないようであれば、自分以外の人間に頼ることが大切です。ただ、友人や親など近しい存在から同意や理解を得られないとかえって落ち込むこともありますので、そういった時は、病院で受診する前に、まずは学内など身近な相談室で悩みや不調を相談してみて、様子を見るのもいいと思います。自分が「辛い」と感じることを無視しないことが大切ですよ。

――なってしまった人への接し方はどのようにしたらいいでしょうか?

ゆうき:原則的にプレッシャーをかけないように気をつけることです。もちろん人それぞれポイントは違いますが、アドバイスや背中を押すために伝えた言葉で相手を追い詰めることも少なくありません。こういうときは、相手の不安をただ聞き続けてあげるだけでも拠り所になるものです。アドバイスも自分の意見も言わず、「ただ、聞く」ことが可能であれば、そうしてあげてください。また、「そのうちわかってくれる企業があるよ」といった慰めよりも、話題を逸らして楽しい気分を共有するほうが、相手にとってもリフレッシュになります。気分転換に、映画や遊園地、スポーツ観戦などに誘ったりするのもいいですね。

 ただ、相手に本当に余裕がない場合には、そういったお誘いや気遣いも届かないことがあります。それは決して、あなたのせいではないということを覚えておいてください。お腹が痛いときに「遊びに行こう」と言われても、素直に喜べませんよね。自分に自信が持てないときも同じです。しかもお誘いに対してノリの悪い、余裕のない自分、相手に素っ気なくしてしまう自分を責めてしまいがちです。そんな時は、「じゃあ、また元気なときに誘おう」と、少し距離を置いて見守ってあげてくださいね。いつも同じ距離に居続けてあげるだけでも、相手は安心してくれますよ。

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