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年金博士「このままでは25~30年先の破綻が現実的ライン」

 小泉政権時代に打ち出された「年金100年安心プラン」のシナリオが10年ももたずに崩壊の危機を迎えている。年金減額や受給年齢の引き上げで済むのなら、負担増を「痛み」と割り切る考え方もあるだろう。だが、残念ながら年金制度は近い将来の破綻が確実視されている。それを隠し続ける歴代政権は、すべてペテン師集団である。そして、安倍政権も例外ではない。

 安倍政権は8月21日、医療・介護・年金など社会保障制度改革の手順案を閣議決定した。しかし、肝心の年金改革について明確なビジョンを示すことはなかった。正確に言えば、示すことができないほど、年金の財源悪化が進んでいるということだ。

「2005年度末に約150兆円あった国民年金と厚生年金の積立金は、現時点で113兆円を割り込んでいます。歳入の不足分を補うため、今年度も4.6兆円の積立金取り崩しが行なわれます」

 そう話すのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏だ。

「残高と取り崩しの推移を見ると、単純計算で〔113兆円〕÷〔4.6兆円〕=24.56年。もしこのままのペースが続けば20~30年内の積立金枯渇は避けられない。小泉政権が『100年安心』と断言した年金改革も、当初からそれが不可能であることは分かっていたはずです。

 国は基本的には現役世代が納める保険料と積立金の運用で年金制度を維持する方針ですが、そもそも、その根拠となる経済前提が明らかにおかしい。国民年金を例にとると、賃金上昇率2.5%、物価上昇率1.0%、そして運用利回りが4.1%の前提で将来設計しています。どれもおかしな数字ですが、特にゼロ金利が続く中、どうやって4.1%で運用するというのでしょう」

「年金博士」の愛称で多数の著書がある社会保険労務士の北村庄吾氏も、積立金が底を突くのは時間の問題という。

「厚労省は2003年に『年金制度維持には厚生年金保険料の26~28%引き上げが必要』との試算を出しながら、保険料抑制のため積立金に手を付けた。運用が政府の筋書き通りにいくとは思えず、このままでは25~30年先の破綻が現実的ラインでしょう」

 弥縫策として2004年の年金制度改正以降は国民年金・厚生年金ともに毎年保険料が上がっているし、受給開始年齢も段階的に引き上げられている。ところが、急速に進む少子高齢化社会においては、それらの策も「焼け石に水」だと専門家は指摘する。

「高齢化と人口減少で『世代間扶養』の原則が崩壊している。2030年には全人口の30%を高齢者が占めます。社会保障の担い手となる現役世代は60%未満ですから、2人で1人を支える計算となる。食べない高齢者はいなくても働かない若者はいるでしょうから、実際はさらに厳しい数字となるはずです」(小宮氏)

 北村氏の見解もシビアだ。

「厚生年金の保険料率は2017年までに18.3%に引き上げられますが、この倍以上でも財源確保は極めて困難。積立金が枯渇し、1人で1人を支える事態も十分あり得る」

※SAPIO2013年10月号

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