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ネット販売のED薬は半数がニセモノ 重篤な健康被害例もある

ED治療薬の「シアリス」。左が真正品、中央と右が偽造品

 一般用医薬品(OTC薬)のインターネット販売が解禁されるが、消費者にとって手軽にクスリの購入がしやすくなる反面、ネット上に数多くの“偽造薬”が出回る危険性も指摘されている。

 中でも深刻なのが、男性の心強い味方である勃起不全(ED)治療薬のニセモノが個人輸入を通じて無数に検出されていることだ。「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」などED治療薬を販売する製薬4社(ファイザー、バイエル薬品、イーライリリー、日本新薬)の調査によれば、ネット上に流通するED薬の実に55%が偽造品だったという。

「偽造ED薬のほとんどが中国の広東省や湖北省などで生産され、日本向けの場合は闇の個人輸入代行業者を介して韓国の卸業者に発送されます。そして、韓国人の運び屋“ポッタリ”によって日本に持ち込まれるのです」(ファイザー関係者)

 日本の税関による密輸の差し止め件数は年々増えている。今年1月、名古屋税関が韓国人「ポッタリ」から1万8154錠、10月にも大阪税関が中国人の運び屋から1万8250錠のニセED薬を押収した。2013年10月現在、密輸の差し押さえ件数は883件と過去最高になってしまった。

 もっとも恐いのは、消費者が偽物だと気付かずに成分がデタラメな偽造ED薬を飲み、重篤な副作用を引き起こすケースが発生していることである。

<2011年1月某日。運送業勤務の48歳男性が、朝7時の起床後に冷や汗やふらつき、立ちくらみがしたため医療機関に救急搬送される。検査の結果、脳神経疾患や急性アルコール中毒などの異常は認められず、唯一、糖尿病薬も使っていないのに極端な低血糖症状が見られた。

 患者から事情を聞くと、前夜にタイ人の友人からシアリスをもらって服用したという。結果的には患者の意識障害の原因は、偽造シアリスに含有されていた血糖降下薬グリベンクラミドによるものだった>(聖路加国際病院内分泌代謝科の出雲博子医師が報告した症例)

 海外でも低血糖による昏睡など重篤な健康被害が多く発生しており、死亡例も確認されているというから、安易なネット購入がいかに危険かがお分かりだろう。

 巧妙につくられた偽物を掴まされないためには、やはりきちんとした医療機関で受診し、正規品のED薬を処方してもらうしかない。だが、ED治療を恥ずかしがったり、保険適用外のために1錠1500円~2000円もするED薬よりも安価なネット薬に手を出したりする人が後を絶たない。

 ED治療の専門医、恵比寿つじクリニックの辻祐治氏が話す。

「ウチにも『ネットで購入したけどまったく効かない』と受診される患者さんがたくさんいます。ちゃんとした病院で処方してもらったED治療薬は良く効いて副作用もほとんどありません。少し元気がなくなったぐらいでも、服用してみれば元気復活! になるでしょう。最近はどこも受診しやすいシステムになっていますから、まずはちょっぴり勇気を出して、専門の医療機関にメールや電話をしてみてください」

 ネットで購入したED薬は、初めから疑ってみたほうがよさそうだ。

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