国際情報

中国嫁日記作者 広州へ移住して最大のチャイナリスクは停電

トークショー終了後にサインする『中国嫁日記』著者の井上純一氏

 40代のオタク日本人と、中国からやってきた20 代のお嫁さん、月(ゆえ)さんとの日常生活を描く人気ブログ『中国嫁日記』の書籍版第3巻(KADOKAWA エンターブレイン)が発行された。著者の井上純一氏によれば、ブログで描き続けている原稿は6巻まで出せるほど溜まっているが、2巻から3巻を出すまでに約2年かかった。3巻出版にあわせて一時帰国していた井上氏に、3巻出版の苦労と、もうすぐ2年になる中国生活について聞いた。

 * * *
――中国へ移り住んでもうすぐ2年になりますね。

井上純一(以下、井上):2年経つといっても、最初の1年は日本にいる時間が長かったんです。マンガの仕事をする環境が中国の家になかったので、単行本『月とにほんご』(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)の描き下ろしを終わらせてから中国へ行く予定だったのですが、終わる前に引っ越しの日を迎えました。

 だから、仕事をするためにちょくちょく日本へ帰る生活だったんです。でも結局、終わらなかったので中国で仕事をすることに決めました。

――マンガを描く仕事のための環境を中国で同じように整えるのは難しいのでしょうか?

井上:PCやスキャナ、ペンタブレットなどハードウェアで僕が使っている機器は、日本で使っていたものと同じメーカーの正規品を中国で買ったので、日本でそろえるよりも高くつきました。中国で安いのは家賃と人件費だけですね。PC本体は日本で組んだものを持って行きました。

 お金がかかることは、その後に起きたことに比べたらたいしたことありません。もっとも問題なのは電圧が一定ではない上に停電がよく起きて、いきなり電子機器が壊れることです。

――具体的には、どんなものが壊れるのでしょうか?

井上:電力が必要なUSB機器、たとえば外付けHDDなどですが、それらを接続したままPCの電源ボタンを押しても、起動しないんです(笑)。でも、この場合はHDDを外せば元に戻ります。それよりも、2年の間に2回、PCの電源ユニットが壊れたことの方が深刻でした。電圧が不安定なので、過電流で焼き切れて壊れるんです。おかげで「電源が壊れました。作業が遅れます」というメールを日本にいる編集者へ何度も送りました(笑)。

――壊れた電源ユニットの替えは中国で購入されたんですか?

井上:中国で暮らしている家の前に「電脳街」と称するPCパーツ専門店が集まっているところがあります。電源ユニットくらいそこで買えるだろうと思っていたら、出力電圧が低いものしかない。仕事用PCはマンガやイラストを描くために高性能なCPUやビデオカードを使っているので、電源も高電圧の出力が必要です。日本なら特殊なパーツではないのですが、近所では買えないので、わざわざ香港まで電源だけを買いに行きました。

 香港で正確にPCの部品を手に入れるには、通訳として月を連れて行かねばなりません。中国人が香港に行くのは面倒な手続きが必要なので、気軽にふらりと行くわけにはいきません。だから、一度の買い物で複数の電源ユニットを買ってきました。

 そうしたら、1年も経たないうちにやっぱり壊れて1個交換したので、もう残り1個しかありません(笑)。交換ばかりしていられないので、無停電電源装置(UPS)を買いました。部屋の電源とPCの間にUPSを設置することで、やっと電源トラブルの回数が減りました。

――日本でUPSを使う場所というと巨大なデータセンターや航空管制、発電所など一瞬たりとも停電が許されないところばかりですね。

井上:PCを不安定な電流から保護するためにUPSを使っています。この間、停電が起きたので初めてUPSが本来の意味で役に立ちました(笑)。でもゴオオオーと鳴り続けてやかましいんです。日本製じゃなく中国で買ったものだからなのか、凄まじくうるさい。いま初めて告白しますが、電源だけではなく他のトラブルも起きて、このままでは年度末までに『中国嫁日記』3巻を出せないのではと冷や汗をかきました。

関連記事

トピックス

あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン