しかし、人民解放軍の現場は違う。日米関係の冷却化や、かつてない反日世論の盛り上がり、そして習近平政権の対外強硬アピールといった条件が揃い、これまで傍流で埋没していた強硬派の軍人が出張ってきた。彼らの目的は国益ではなく、単純に自身の点数稼ぎ、出世のためのアピールだ。問題はその出世競争によって、人民解放軍の現場レベルのコントロールが利かなくなっていることだ。

 ベトナム沖の油田採掘は党中央と人民解放軍が完全に一致して動いているが、防衛識別圏の設定や海上自衛隊の艦船をロックオンした件(*注2)は現場の独断だった可能性が非常に高い。

 尖閣諸島に対する行動は間違いなく反日世論の支持を受ける。党中央が追認せざるを得ない環境が整っている」

 安倍首相は解釈改憲で集団的自衛権の行使を可能にしてアメリカにしがみつこうと必死だが、日本を取り巻く安全保障の現実は、日米同盟によって日本は守られるという吉田ドクトリンが崩壊しつつある。

【*注1】内務省警保局「連合軍進駐経緯ニ関スル件」(1945年8月22日発令)に「聯合軍進駐ニ伴ヒ宿舎輸送設備(自動車、トラック等)慰安所等斡旋ヲ要求シ居リ」との記載がある。米軍は戦後になって、日本人を慰安婦として差し出すよう要求していたのである。

【*注2】昨年1月、尖閣諸島北方の公海上で中国のフリゲートが海自護衛艦「ゆうだち」に対し、射撃用の火器管制レーダーを照射した。

※SAPIO2014年7月号

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に“騙されやすい度”をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン