国内

サラリーマンのがん患者 30%が依願退職 4%が解雇されている

 医療の進歩によりがん患者の生存率は確実に上がった。しかしながら「がんと生きていく」場合に最も深刻なのが就労問題だ。治療しながら働けるのに解雇される、子会社に出向になり収入が激減する、そんな事例が多発している──。

「幸い、夫のがんは治ったけれど、まさかそのことでマイホームを失うことになるなんて…」

 A子さん(35才・パート)の3才年上の夫が会社の健康診断で「初期の胃がん」と診断されたのは、昨年3月のこと。1人息子が小学校に上がるのを機に、一念発起して一戸建てのマイホームを購入した矢先の出来事だった。

「夫は胃を3分の2摘出する手術を受け、2週間ほど入院。それから2か月ほど休養して、仕事に復帰しました。治療費や入院費はがん保険で大部分を賄えましたが、復帰後の収入が激減してしまったんです」(A子さん)

 夫はIT企業のエンジニアで、大きなプロジェクトのリーダーを任され、がんで休職する前の年収は800万円ほどあった。しかし、復帰後は役職給と出来高給がごっそり削られ、年収は400万円ほどにダウン。さらに半年もたたないうちに子会社への出向を命じられ、給与は以前の3分の1ほどに落ち込んでしまった。

「夫は胃が小さくなった影響で食が細くなり、体力的に以前のような残業は無理。『出向は受け入れるしかない』と無念そうに話していました。今の収入ではとてもローンを払えないので、買ったばかりの家は泣く泣く売りに出すことにしました」(A子さん)

 それでも、仕事が続けられるだけA子さんの夫は恵まれているほうかもしれない。B子さん(45才・パート)の夫(48才)は3年前に前立腺がんが判明。手術か放射線治療か悩んだ末、より体への負担の少ない放射線治療を選択した。すると、会社側の態度が一変したという。

「放射線治療のために2か月間ほぼ毎日通院するので、その間休みをもらうしかありませんでした。夫がそのことを会社に申し出ると、『治療はいつまで続くのか』と露骨に嫌な顔をされ、『今なら退職金を増額できる。きみにとってもゆっくり治療に専念できたほうがいいんじゃないか』と言われたそうです。

 ていのいい首切りですよね。夫は『会社に迷惑をかけたくない』と退職を受け入れました。形の上では自ら申し出た依願退職。長い間、会社のために一生懸命働いてきたのに、なんて冷たいのって怒りに震えました」(B子さん)

 がん治療中は退職金とB子さんのパートでやりくりし、その後、夫は小さな会社に再就職できた。だが、年収は以前より大幅に下がったうえ、いつ再発して再び失職することになるかと、不安は消えないという。

 厚生労働省の2003年の調査によれば、会社勤めをしていたがん患者の30%がB子さんの夫のように依願退職し、4%が解雇されている。

 また、NPO法人がん患者団体支援機構とニッセンライフの共同実施アンケート(2009年)によると、がん患者の平均年収は約395万円(診断前)から約167万円(診断後)に激減している。

※女性セブン2014年7月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
2才の誕生日を迎えた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
【9月6日で19才に】悠仁さま、40年ぶりの成年式へ 御料牧場、小学校の行事、初海外のブータン、伊勢新宮をご参拝、部活動…歩まれてきた19年を振り返る 
女性セブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン