現在テレビ界では、『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)『所さんのニッポンの出番』(TBS系)といったバラエティものから、『COOL JAPAN』(NHK)のような教養番組まで、日本大好きな外国人を紹介する番組が大流行だ。しかし日本のテレビ局は、海外の取材現場でも他国のテレビクルーから奇異の目で見られている。スペイン在住のジャーナリスト・宮下洋一氏がいう。
「例えば海外でのサッカー取材の時、日本メディアの記者たちは試合後のコメント取りが終わった後、必ずみんなで集まって、聞き取った内容が他社と異なっていないか互いに『答え合わせ』をしている。
スタジアムを閉める直前までみんなで1か所に固まっている姿は、外国人ジャーナリストから見ると本当に異様です。ヨーロッパではなるべく独自のコメントを取ろうとするのが当たり前だし、共同コメントの時でも自分たちが感じたストーリーで報じるなら、違ったものになる。
私は以前、あるサッカー選手にひとり別の場所でコメントを取ったら、『答え合わせ』をしている日本のメディアの集団全員に睨みつけられた。海外の感覚からすれば、横一線のニッポンの報道はジャーナリズムとはいえません」
どのチャンネルを見てもニュース番組のスポーツコーナーが全く同じネタとコメントばかりなのはその結果なのだ。
「アメリカでは、他人と同じことをやっていれば、すぐクビになります。スタンスが日本とは基本的に違います」(『ニューヨーク・タイムズ』東京支局長のマーティン・ファクラー氏)
国際会議でも日本の記者は馬鹿にされる。
「サミットやAPECなどの取材に行くと、日本のテレビ局の記者が若手ばかりなのに驚きます。そのためどの国の首脳にも突っ込んだ話を聞けない。海外メディアは必ず超のつくベテランが各国の首相や大統領に質問し、相手の言うがままの言葉を垂れ流すことはしません」(来日34年のカナダ出身のジャーナリスト、ベンジャミン・フルフォード氏)
相手の言うことを垂れ流すどころか、現場に行きさえしないのが、日本のテレビ局の常識のようだ。フルフォード氏が続ける。
「独自取材をせず、海外ニュースは現地の新聞を訳すだけ。紛争地帯など危険な場所にも行かない。ジャーナリストとしてのプライドがあるのかといいたくなる」
たしかに、「エボラ出血熱」や「イスラム国」のニュースの映像は、自局の記者が現地に行っていないため、現地報道をそのまま流すだけ。これでは“独自の視点”など期待するほうが無理だろう。
※週刊ポスト2014年12月5日号