「無宗教」を自認する人でも、初詣に行けば神社でおみくじを引き、学業成就や安産を願ってお守りを買う機会はあるはずだ。葬式では僧侶にお経を読んでもらい、「気持ち」をお布施に託す。それらには当然、「原価」や「相場」が存在する。
神社でおみくじやお守りを“買う”というのは実は間違い。それらは授与品と呼ばれ、神社からすれば神様の分身なので値段はつけられないからだ。お守りなどを購入する場合、正しくは「○○円納める」といい、その金額は「初穂料」というのが正しい。収穫された稲穂を神にお供えする習慣に由来している。
「ご利益に値段はつけられない」とはいっても、お守りや絵馬の大小などで支払う金額も変わる。おみくじやお守りはやはり製造業者から神社仏閣に納められて販売される製品に変わりはない。当然、原材料費や製造コスト、物流コストなどがかかるのだ。そこで気になる「原価」を調べてみた。
100円で売られることの多い「おみくじ」。全国に数社ある授与品製造業者が、「大吉」や「凶」といった運勢や和歌を描いた原版を和紙に印刷し、手作業で折るなどして全国の寺社に卸している。
「1000枚3500円前後が一般的。原版は毎年同じで印刷代や郵送料はそれほどかからない。人件費が6~7割を占めます」(授与品製造業者)
一枚当たり3.5円ほどで人件費などのコストを省けば原材料原価は1~1.5円。神社では仕入れたおみくじを祈祷してから販売する。つまりそこに“有難さ”が加味されているということか。
安産や合格祈願の「お守り」は大きさによるが500~1000円が一般的なお値段。「原反」といわれる錦などの織物で作られた袋と、木札などが詰め込まれた「内符」でできている。加工や袋の組み上げはほとんど手作業でやはり人件費が7割近くを占める。
「卸価格は小サイズで50円から130円ぐらいまで。高級西陣お守りで250~300円。初詣前の年末は書き入れ時なので、寺社は『早割』で少し安く仕入れることができます」(前出・授与品製造業者)
この他、「絵馬」は一般的な松系木材、無地タイプで50~100円、印刷物が入っても150~200円前後で卸されているという。
一方、「1区画○○円」という広告チラシをよく目にする「お墓」。いわゆる「墓石」の原価も気になる。墓石の値段はピンキリだ。安い中国産のものは一般的な和型・八寸角で70万円ほどから、庵治石などの国産最高級品ともなると500万円以上のものまである。
『お寺の収支報告書』(祥伝社新書)の著者で曹洞宗見性院住職、橋本英樹氏が語る。
「墓石自体の原価は低く、相場である150万円前後の墓石でも問屋の卸価格は約30万円と、だいたい販売価格の5分の1ほどです」
※SAPIO2015年1月号