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持ち家志向は77%も 戦後の混乱期まで借家住まいが当たり前

 住宅ローンは払い終わった。子供も就職し独り立ちした。衣・食・住には今は困っていないけれど、年金は減らされ、老後の生活は大いに不安──。

 それが多くの人の“退職後の実感”に近いだろう。思い切って「住」を変えると、不安は安心に変わることがある。だが、我が子の成長が柱の傷に残るマイホームを手放すのは忍びない……そんな「人生後半の難しい選択」を我々はどう考えるべきなのか。

 国交省の「土地問題に関する国民の意識調査」によると、土地・建物の両方とも所有したいという「持ち家志向」の割合は、1996年度の88.1%をピークとしてその後は減少傾向が見られるものの、2013年度調査でも77%と依然として高い。

 さらに世代間の差を見ると、20代が65.9%、30代が70.7%、40代が68.5%なのに対し、50代は83.1%、60代が83.9%、70代が79.9%と中高年世代が圧倒的に高い。

 これは先進国の中でも突出した傾向とされるが、そもそも日本人の「持ち家志向」はどんな背景で生まれたのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。

「持ち家志向は江戸時代やそれ以前から続いている『日本人のDNA』だといわれますが、誤りです。上流階級は別にして、庶民は江戸時代や明治時代はもちろん、戦後の混乱期までは借家に住むのが当たり前でした。

 それが戦後に裕福になるにつれ、一般庶民にまで持ち家志向が広がっていく。急速に浸透したのが高度経済成長期で、なかでも列島改造ブームの頃でした。『一億総不動産屋』といわれるほど土地所有がブームになったのです」

 バブル崩壊後はデフレで不動産価格が下がり続け、「家を売ってもローンを完済できない」状況に陥っている人も少なくない。

 退職金でローンをようやく完済し、そのかわりに老後資金が少なくなって年金だけでは暮らしていけないと不安を覚えている人が増えているのはその後遺症だ。

※週刊ポスト2015年3月13日号

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