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スマホで読む成人漫画 無料の背景に電子書籍業界の販売戦略

 昨今、スマホを使えば簡単に成人漫画も楽しめるが、疑問なのは、なぜ「無料」で読めるコンテンツもあるのかという点だ。そこには電子書籍業界の販売戦略がある。

 現在、国内のスマホ所有者は約6割にのぼり、ノートパソコンの利用者数を抜いた(『モバイル機器』2015年NTTコムリサーチ調べ)。タブレット台数も右肩上がりで、ICT総研の2014年『スマートデバイス需要動向調査』では、2015年には1041万台、2013年度比46%増となる見込みだ。

 しかし、スマホやタブレットの普及に比して、電子書籍サービスの利用者はそこまで増えていない。まだ「スマホで本を読むには抵抗がある」という人は少なくないのだ。

 そんな人たちの心のハードルを下げるのが「成人漫画」だという。スマホ評論家の新田ヒカル氏がいう。

「電子書籍の開始当初からサービス提供業者の間では『普及するためにはアダルトコンテンツの充実が最大のポイントだ』と予測されていました。ビデオデッキがアダルトビデオの流行をきっかけに普及した時と同じ流れを狙っているわけです。

 アダルトコンテンツは増えましたが、まだ爆発力がない。そこで無料で見られるコンテンツを増やすことで、まずは電子書籍を体験してもらい、ゆくゆくは有料のコンテンツも買ってもらう、というビジネスモデルが生まれました」

 漫画家はどう考えているのか。自身の成人漫画を無料で提供している20代の漫画家はこう話す。

「『まずはいろいろな人に自分の漫画を読んでもらいたい』と思い、無料提供を決めました。紙の雑誌とは異なり、電子書籍ならページ数や刷り部数の制限がない。印刷物だと書店の棚スペースが限られるので、大規模店にしか置いてもらえないといったこともありますが、電子書籍ではそういったことはない。最近は電子書籍向けの漫画ばかり描いています」

 ファンを増やして知名度を上げたいという新進漫画家たちが電子書籍の無料成人分野に参入し、活況を呈している。

「最初は無料で読むだけでも、それをきっかけにしてやがて有料コンテンツを購入する人は多い。長い間伸び悩んでいた電子書籍市場は、最近になって急激に拡大し始めています」(新田氏)

 電子書籍サービスを提供するBookLiveの広報部はこう話す。

「当社の電子書籍の点数は、ここ2年で約10万冊から約36万冊と飛躍的に増えました。現在はアダルトよりも少年漫画の売れ行きが好調で、アダルトコンテンツをきっかけに電子書籍を使い始めた読者が一般コンテンツに手を伸ばし始めていると考えています」

※週刊ポスト2015年4月10日号

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