芸能

天皇の料理番 花燃ゆが欠く「大河の役割」果たすとの評価も

 ドラマの出来不出来は結果論だけでは語れない。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が2つの話題作を比較検証した。

 * * *
「時代」というものを、どう描くのか。大河ドラマとは、どうあって欲しいのか。つくづく考えさせられてしまいました。なぜなら、4月26日にスタートした『天皇の料理番』(TBS日曜午後9時)を見てしまったから。

 親子の関係、兄弟や夫婦の関係。人と人の距離、相手への思い、期待と裏切り。怒り、とまどいといった個人の感情が、丁寧に描き出される。まるで地上に張り付く虫のうごめきを、虫眼鏡でじっと観察するように。

 と同時に、人々が収容されている社会という器や、国、世界といった大きな時代の流れへ、カメラはぐっと引いていく。まるで、上空の鳥の目に切り替わったように。

 地面すれすれのズームアップと、思い切り引いた天からの俯瞰。その行き来に、視聴者はワクワクするのです。ちっぽけな人間の生き様と大きな時代の描写との往復運動に、引き込まれるのです。言ってみれば、それが「大河ドラマ」の役割ではないでしょうか。

 その役割を見事にやり切っている『天皇の料理番』。対して、NHKの大河ドラマ『花燃ゆ』は、役割を担うはずがまったくもってもの足りない。

『天皇の料理番』はノンフィクション小説が原作。舞台は明治の大変革期。福井生まれの落ちこぼれ息子が、西洋料理人になるべく奮闘する筋書き。過去に2度ドラマ化されている。前例を土台にできるアドバンテージもたしかにある。しかしそれは、明治維新を繰り返し題材にしてきたNHK大河ドラマも、さして違わないはず。

『天皇の料理番』の秀逸さはまず、キャスティングにくっきり現れています。主役・篤蔵を演じる佐藤健。躍動感に満ちていて、体を大きく使い立ち回り。その一方には、妻役・黒木華や兄役・鈴木亮平。実に静かに抑制した演技で、表情と瞳だけで語りかけてくる。

 イキイキとした主人公と、取り巻く人々の静けさ。動と静の対比は、美しくさえある。演出側にしっかりとした設計図があるからこそできた配役と配置でしょう。

 もう一つ、息をのむのが小道具や大道具、建物、風景の見事さ。緑山スタジオでのセットと、明治村や倉敷でのロケ。両方を組み合わせて撮影しているようですが、何よりも明治という「時代」を描き出そうという意欲が、空間作りから伝わってくる。ガラスや壁の装飾から、時がじわりと滲み出ている。裁縫道具一つ、柱一本から、時代が見えてくる。

 視聴者はそういった細かなモノたちから「時代」の奥行き感を感じとって楽しむのです。

関連記事

トピックス

交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
イエローキャブの筆頭格として活躍したかとうれいこ
【生放送中に寝たことも】かとうれいこが語るイエローキャブ時代 忙しすぎて「移動の車で寝ていた」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン