スマホ画面を指でなぞり、パズルが解ければ敵にダメージ。倒した敵を仲間にして、また新たな戦いへ──今までにない新感覚スマホゲームとして公開されたガンホー・オンライン・エンターテイメントの『パズドラ』は2012年から2014年までスマートフォンのアプリとして売り上げ1位になるほど、若者を中心に絶大な人気を集めている。その開発に自ら携わったクリエイター社長・森下一喜氏に作家・杉山隆男氏が聞いた。
──ゲームをつくるとき、社長である森下さんはどんな役割を?
森下:ゲームのコンセプトは僕がつくります。「俺はこういうのをつくろうと思うんだけど、どう思う?」って最初は1人か2人くらいのスタッフに話して、企画を細かく詰めます。ある程度見えてきたら、チームを編成して開発に入ると、そこでアイディアがいっぱい出てくる。その取捨選択は僕がやります。
僕自身のアイディアや他のスタッフのアイディアをいくつも集めて、「それナイス」「いいね」とやりながら、まさにモノづくりをしているという感じでゲームを仕上げていく。そのやりとりでは、スタッフも僕を社長だと思って喋ってないと思います。そのときの僕は社長という側面は消えて、一クリエイターというか一企画者なんです。
──社員のみんなとゲームをつくっているのはおもしろいですか。
森下:一番おもしろいですね。おもしろいものとは何か、それはわからないとさっきいいましたが、ただ一つだけいえるのは、ゲームの最大のおもしろさは「目標と達成」だと思うし、ゲームと他の娯楽産業との違いも実はそこにあると思うんです。映画を観に行くのに、「よし、最後まで観よう」と目標設定して行く人はまずいないし、音楽もそうですね。ある意味受動的に体感する。
でもゲームというのは、「クリアするぞ」と自分の中に目標設定があって、それをどんどん達成する快感だと思うんです。同じものを手に入れるのでも、自分が頑張って手にしたという価値があるからこそ、初めて楽しいという経験になってくるし、そこにゲームの醍醐味がある。お客さんにどんな風に目標とそれを達成した快感を与えていくか、僕たちがゲームをつくる上で一番知恵を絞ることです。
※週刊ポスト2015年8月7日号