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「一億総活躍」という表現には大人のズルさが凝縮されている

 第3次安倍内閣が目玉として「一億総活躍」担当相を置いた。だが字面をみても要するに誰がなにをするのかさっぱりわからない。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏はそこに「大人のズルさ」を見る。

 * * *
 冗談みたいで聞いた途端に苦笑を禁じ得ないという点では、昔、どっかの市役所に「すぐやる課」があると聞いたときの感覚を思い出しました。10月7日に発足した第3次安部改造内閣で、目玉のひとつとして誇らしげに登場したのが「一億総活躍担当大臣」というポストです。第一号には、加藤勝信衆議院議員が就任しました。

 難しいことはよくわかりませんが、こういうポストを作ったのも、こういう大胆な名前にしたのも、きっと壮大な構想や深遠な狙いがあるのでしょう。ただ、この字面を見ると、たぶん多くの人がそうだったと思いますが、ほかのいろんな「一億総○○」を連想します。

 「一億総動員」「一億総懺悔」「一億総白痴化」「一億総中流」など、日本では昔から「一億総○○」という表現が便利に使われてきました。なぜ「一億総○○」は、こんなにも活躍してきたのか。共通点を考えることで、大人にとって大切な何かを学び取りましょう。

 どれもそれなりにつながる部分はありますが、「一億総活躍」との共通点がもっとも明確なのは、第二次世界大戦が終結した直後に当時の東久邇内閣が唱えた「一億総懺悔」でしょうか。たとえば、こういう共通点を見出すことができます。

1.字面や響きがどことなくインチキ臭い

2.「それはケシカラン!」と批判しづらい

3.誰が何をやればいいのかよくわからない

4.ほかの何かのせいだと思わせてくれる

5.本当に実現するとは誰も思っていない

 やはり政治家というのは、昔も今も、言葉を都合よく使うのがお上手なんですね。いや、1の共通点にしても、字面や響きがインチキ臭いのは、使っているほうもきっと承知の上です。それでも使わざるを得ない、だからこそ使っておきたい理由があるのでしょう。

 活躍にせよ懺悔にせよ、そのこと自体は「悪いこと」ではないので、2のように「それはケシカラン!」と批判しづらいという共通点もあります。「安心」とか「安全」とか言えば誰も反対できなくて、学校の中などで子どもの管理がどんどんきつくなっていく構図と似ているかもしれません。

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