芸能

「英国ドラマの魅力を世界に知らしめた」記念碑的作品の見所

 テレビドラマは生活に根ざした部分が人気の鍵になりやすいが、同時に海外モノには新鮮な魅力を感じさせられることも多い。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
『天皇の料理番』『下町ロケット』、そして『あさが来た』。話題を集めヒットしているドラマを眺めると、共通点がみつかる。それは、歴史的な出来事や現実の社会という「ドキュメンタリー」的要素と、面白い筋立て、つまり「フィクション」の要素とが上手に溶け合っている、という点だ。

 作者が思いついたご都合主義的で強引なストーリーを、連続ドラマで何度も見せられるとゲンナリしてしまうこともしばしば。しかし、「ドキュメンタリー」という現実の厚みに良い意味で縛られた上で、「フィクション」の面白さがそこに溶け合えば、「鬼に金棒」のドラマとなる。視聴者の方も、時代背景や現実の現場について細かく知れば知るほど、そのドラマを見る楽しみも深まっていく。

 日本のドラマに限らない。

「鬼に金棒」海外ドラマの代表格がいよいよ始まる。『ダウントン・アビー4  華麗なる英国貴族の館』(NHK総合 10日~日曜午後11時)。

 世界的にブレイクしたこのドラマシリーズ、「英国ドラマの魅力を世界中に知らしめた」記念碑的な作品だ。イギリスでは視聴占拠率40%超という驚異の記録を生み、アメリカでも賞を総なめにした。

「イギリス貴族の物語」というと、ちょっととっつきにくい、という人もいるかもしれない。が、世界中が熱狂したのには、それなりのワケがある。『ダウントン・アビー』がより面白くなる見所。それは以下の3つだ。

●その1 ドキュメンタリー的要素のスリル

 19世紀末~20世紀初頭、近代化の波に翻弄され、イギリスの貴族は経済的な困窮に直面していく。城の維持すら困難になり没落していく貴族たちがこのドラマの主人公だ。

 一方、アメリカでは株や大規模農業など新たな事業で成功を収め、大富豪が続々と生まれてきた。しかし彼らはカネはあっても、伝統や名誉という地位が無い。そこで、イギリス貴族の元へアメリカ大富豪の娘たちが嫁ぐ、という作戦が編み出される。後にはイギリスの政治や王室にも、大きな影響を及ぼしていく。

 ダイアナ妃の曾祖母も、元首相ウィンストン・チャーチルの母も、実はこの時代に英国貴族へ嫁いだアメリカ人だったことを、ご存じだろうか? という史実を下敷きに『ダウントン・アビー』を見れば、ワクワクドキドキ。破産寸前の城を維持しようともがく伯爵家の姿が真に迫ってくる。現実を知るほどに、ドラマツルギーも際立つ。

 ドラマにあわせてBS世界のドキュメンタリーでは19世紀末のイギリス貴族と政略結婚を描いたドキュメンタリー番組『海を越えたアメリカン・プリンセス』も放送された。

●その2 独特の様式性--しぐさ、衣装、装飾品、調度品の美しさ

 馬車、銀製の燭台。羽のついた帽子、ぶ厚いカーテン。シルクのドレス。きらびやかな品々に囲まれた貴族の暮らしを、質感、肌触りともに克明に描き出す。紅茶のカップの持ち方、飲むしぐさ一つの中に、貴族の様式性が見てとれる。

 舞台となった伯爵宅のロケは、イギリスに現存する古城・ハイクレア城で行われた。だから重厚感はハンパではない。窓辺から射し込む光、絨毯に落ちる影。圧倒的な映像美が、私たちを異世界へと連れ去ってくれる。

関連記事

トピックス

寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビー服は男の子のものでは?》眞子さん、夫・小室圭さんと貫く“極秘育児”  母・佳代さんの「ラブコール」も届かず…帰国が実現しない可能性も
NEWSポストセブン
選手着用のレオタードやジャージから「スポンサーロゴ」が…(協会のSNSより)
新体操日本代表・フェアリージャパン「パワハラ問題」でレオタードから消えた「スポンサーロゴ」 スポーツ庁が求めた第三者調査を“秘密裏に実施”との関係者証言も
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“半日で1000人以上と関係を持った”美女インフルエンサー(26)がイギリスの公共放送で番組出演「口をすぼめて、吸う」過激ビジュアル
NEWSポストセブン
本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
麻田雅文氏(左)と小泉悠氏
《『日ソ戦争』麻田雅文氏×小泉悠氏対談》ソ連の講和仲介に期待した日本人の「アメリカよりロシアのほうが話せる」という感覚
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン