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地主が借地から退去せよと通告し夜中に呼び鈴 弁護士の見解

 昨年7月に国税庁が発表した路線価(相続税や贈与税の課税額を算定する価格指標)を見ると、東京・名古屋・大阪の3大都市圏はそろって上昇。回復傾向は顕著になっている。そのような状況になると土地の売り買いも活発化するが、新たな地主から「借地から退去せよ」と通告された場合、従わなければいけないのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 私は10年前に地主に許可を得て家を建てました。しかし、地主が代わり、この土地を使うから退去せよと通達してきたのです。借地権を主張しても地主の権利のほうが上だといい、最近では夜中に呼び鈴を鳴らされたりしています。引っ越したくありませんが、それでも新地主に従わなければいけませんか。

【回答】
 地代を払って建物を所有する目的で土地を借りる賃貸借契約には、借地借家法が適用されます。この法律は、建物所有目的の賃借権を借地権と定義し、保護しています。

 具体的には、賃貸借期間は原則として最低30年間とし、それより短い期間の定めは無効です。そして、期間が満了しても建物が存続していれば、最初は20年間、その次の期間満了時からは10年間の更新を請求できます。

 地主は自己使用の必要性や立退料提案などの正当な事由がない限り、更新に異議を述べることはできません。これらの強力な借地権は当初の賃貸借契約をした地主に対して主張できるだけではありません。

 借地借家法は、借地権者が建物の登記をしていれば、その借地権を第三者にも対抗できると定めています。したがって、建物の登記をしてさえいれば、元の地主から土地を買ったという新地主に対しても、正当に借地権を主張できるのです。

 以上により、新地主の言い分はでたらめです。それにもかかわらず、夜中に呼び鈴を鳴らしたり、嫌がらせをするのであれば、正当な権利行使ではありません。

 その結果、あなたが平穏に生活することを妨害されるようになれば、違法な権利の侵害として不法行為になる可能性もあります。そこで、妨害行為をやめるように文書で明確に申し出て、それでも嫌がらせが続いた場合は、録画や録音をして記録に残すことをお勧めします。

 不法行為として慰謝料請求ができるだけでなく、態様によっては刑事事件にもなります。例えば、立ち退き要求の張り紙をあなたの家にした場合、軽犯罪法に触れますし、家に来て脅かしたり、退去を求めて居座れば、不退去ということで刑法犯にも該当します。そのような場合には、証拠をそろえて警察に相談してください。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年1月29日号

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