1870年に岩崎弥太郎が創業して以来、150年もの歴史を誇る“世界最大の企業グループ”三菱財閥に危機が訪れている。燃費不正が発覚した三菱自動車の処遇をめぐり、グループとしての「重大な決断」を迫られているのだ。
三菱自による燃費不正に対する賠償、補償の費用について、野村證券では最大で約1040億円を要すると試算しているが、この試算は軽4車種だけが対象だ。それ以外の車種にも同様の措置をすることになれば、賠償・補償額はさらに膨れ上がる。
しかも現在、三菱自は軽の販売を停止しているため、4月の軽販売台数は前年同月比で44.9%減にまで落ち込んだ(全国軽自動車協会連合会調べ)。
もはや自力での再建は限りなく厳しい状況で、三菱グループが救済の手を差し伸べるかどうかに三菱自の命運が懸かっているのだ。
三菱自は2000年と2004年の二度にわたってリコール隠しという不祥事を起こした。その際、三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行(当時)の「三菱御三家」が各400億円ずつ出資したほか、三菱信託銀行や東京海上日動、明治安田生命など、三菱グループ全体で2000億円規模の増資が実施されて三菱自は危機を免れた。それはまさに「組織の三菱」を体現する出来事だった。
しかし、財界からは、「むしろゾンビ企業だった三菱自を三菱グループの力で無理やり存続させたことのほうが問題だったのではないか」との声が上がる。「仏の顔も三度まで」というが、三度目となる今回、果たして三菱グループは救済に動くのか。
そこでいま、関係者が固唾を呑んで見守っているのが、「三菱金曜会」の動向である。金曜会とは、三菱グループ29社の会長、社長など48人が一堂に会する“秘密会合”だ。毎月第2金曜日に、丸の内にある三菱商事本社で開催される。あくまで表向きは親睦会とされているが、字面通りに受け取る人は少ない。実質は、三菱グループの最高意思決定機関と見られている。
過去の三菱自救済で発揮されたグループ力も、金曜会があってこそだ。慣例に従えば、不正発覚以来、初の金曜会は5月13日の金曜日に開催される。ここで何が議論され、何が結論となるのかで、三菱自の命運が決まる。
※週刊ポスト2016年5月20日号