国際情報

米軍撤退後のフィリピン 経済的損失の過酷な状況

深夜のフィールズアベニューでは娼婦と男が堂々と歩く姿が

 フィリピンでは1992年までに米軍基地が完全撤退した。しかし、中国との領有権問題やローカル経済の低迷などから米軍駐留時代を懐かしむ声も聞こえる。在フィリピン12年のノンフィクションライター・水谷竹秀氏が現地ルポをお届けする。

 * * *
 午前1時、ネオンが明滅するバーに挟まれた通りには欧米、アラブ、韓国系の男たちがそぞろ歩いていた。キャミソールに短パンといった露出度の高いフィリピン人娼婦たちは店の前で客引きを続け、路上に座り込む少年たちはたばこや「サンパギータ」と呼ばれる白い花を物乞いのように売る。朝まで営業しているバーもあるこの界隈は、まるで不夜城の気配を漂わせていた。

「昔ここへ遊びに来ていた米兵たちが、お金やキャンディーをくれたのを記憶しているわ。確か街の消火活動も手伝ってくれたの。私が手配した女の子の何人が米兵と結婚したことか」

 とあるバーのママさん、ペルラ(65)はそう語り、1992年まであったクラーク米軍基地内のクラブで働いていた頃の写真を、携帯電話で見せてくれた。ピンクのジャケットを羽織ったペルラが黒人の空軍兵、ダンサーの若い女性と一緒に写っている。それを懐かしそうに眺めながら続けた。

「米軍がまたクラークに戻って来るというような話を最近、聞いたわ。女の子にお金を落としていくから、できれば実現して欲しい」

 クラーク空軍基地跡に沿うフィールズアベニューには現在、ビキニ姿の娼婦たちが踊るゴーゴーバーが約90軒ひしめく。マニラから車で2時間北上したルソン地方パンパンガ州アンヘレス市に位置し、戦後しばらくしてから、基地に駐留する米兵のたまり場となって繁盛してきた。

 クラーク空軍基地の広さは約6万3千ヘクタールに上り、シンガポールの国土面積とほぼ同規模の広大な米軍事拠点だった。ベトナム戦争勃発後は出撃地として使用された。ところがマルコス政権の1980年代初頭、「基地の存在は独立国家として認められない」、「米政府による内政干渉だ」といった反発から基地撤退を求める機運が本格的に高まり、比米両国で政治的駆け引きが続いた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン